第102話 側妃に薬を飲まされて意識を無くしました

私はそのまま側妃様の部屋に連れて行かれたのだ。


「まあ、聖女様は大変ね。無理やりこの異世界に召喚されたたのに、アリストンの王宮からは聖女じゃないって追い出されたんですって」

側妃は私に同情的に言ってくれたんだけど……


側妃の取り巻き連中が興味津々に聞いていたし、ここにはあのムカつく第二王子とチェルシーまでいたのだ。


完全にアウェーだった。

私は失敗したと思ったのだ。

付いてくるんじゃなかったと思っても後の祭りだった。


「まあ、異世界から無理やり呼び出されたの!」

「それは大変だったでしょう」

「人には言えない苦労をされたんだと思うわ」

取り巻きに続いて、側妃が言ってくれるんだけど、これは絶対に人に言えない仕事をしていたと皆に言いたいに違いない。


「いえ、そこは、すぐに殿下に助けて頂けたので」

私は否定した。


「まあ、なんてことなの。じゃあ、殿下は追い出されたあなたを王宮の出口で待っておられたというの?」

側妃が驚いて聞いてきた。


「そんな都合の良いことがあるの?」

ポウナル公爵夫人が言ってくれたが、確かにそうだ。なんであの位置にクリフはいたんだろう?

私も不思議に思った。


「なんか、アリストンと示し合わせたように思うのは私だけなの」

「私もあまりにもタイミングが良すぎると思うんでけれど」

「私もそう思いますわ」

皆、側妃の言うことに頷くんだけど。


「たまたまそこにいらっしゃったと聞いていますわ」

私はそう言うしか出来なかった。


でも、多少は不思議たと思ったのは秘密だ。


「まあ、そうよね。殿下がアリストンと陰で繋がっているはずはないものね」

側妃は否定してくれた。でも、とても含みのある言い方なんだけど。


「でも、せっかくここまで連れて来て面倒を見てくれた殿下が、アマンダ様の元に戻られたんでしょ。あなたはこれからどうするの?」

側妃は私にズバッと斬り込んできたのだ。

そこまでは私は考えていなかった。


「そうよ。どうされるの?」

「部屋は殿下のお近くと聞いてましてよ」

「それをこれからも使われるの?」

「流石にそれは無理なんじゃ。だって、その部屋は本来アマンダ様の部屋だって私聞きました」

チェルシーが言ってくれたんだけど、そんなことまで、チェルシーは知っているんだ。私は驚いた。


「えっ、じゃあ、聖女様は未来の皇子妃のお部屋にいらっしゃったの?」

「まあ、そうなのね。それは今回の件は心痛余りあるわね」

側妃は言う事は私に同情しているように聞こえるが、顔は私を面白がって見ているのが丸わかりだった。


「で、あなたこれからどうするの? その部屋はアマンダ様が入られるのよね」

チェルシーが畳み掛けてくれるんだけど。


そんなの考えたことはなかった。

そんなに詰めて言わないでよ。


「チェルシー、それを今聖女様に言うのは酷というものよ。まだ、聖女様も心の準備が整っていないんだから」

側妃が言ってくれるが、絶対にこれは喜んでいる。


「ところで聖女様。アリストンへ行った問責の使者が帰ってきたのはご存知よね」

急に話しを側妃は変えてきた。

「いえ、聞いていませんが」

私は何故その話をするのか判っていなかった。


「そうなの? 私が聞いたところによると、あなたを誘拐したのは大司教の独断だったそうよ。

その上、なんとアリストンの聖女様までもが大司教に襲いかかられたそうなのよ。そこを私の甥がお助けしたんですって。あまりのことに、そのまま大司教は処刑されたそうよ」

側妃が言ってくれたんだけど。それは聞いていなかった。

何故皆知らせてくれないんだろう?


「聖女様はあなたを追い出したことをとても後悔していて、一度謝りたいとおっしゃっていらっしゃるそうよ」

「そうなのですか? 初めて聞きました」

私は驚いた。リンが謝りたいって言うなんて、おかしい気もしたが、自分も襲われて良心の呵責を感じたのだろうか?


「殿下とのことが白紙になって、あなたも将来のことを考えないといけないでしょう。だから一度アリストンに行って、向こうの聖女様と話し合っても良いのじゃないかと思ったのよ。なんなら甥には私から話してみるけれど」

側妃が親切そうに言ってくれたが、私の独断で返事は出来なかった。


「有難うございます。ただ、それはクリフォード殿下と相談してみないと」

「そうよね。でも、殿下はあなたの相手をするのが疲れたとおっしゃっていらっしゃるんでしょう。いつまでも殿下のお手を煩わせるのもどうかと思うのだけど」

「でも、そこはきちんと殿下と相談させて頂きます」

側妃の言うことももっともだったが、私はそこはきちんとクリフと話さないといけないと思ったのだ。


私は立ち上がろうとしてクラっとした。


あれ、なんか変だ。頭がくらくらする。


ういろうになにか入っていたんだろうか? 

でも私は聖女だ。ヒールをかけたら……


でも、無理だった。


「ごめんなさいね。アオイ、あなたにはアリストンから取り寄せた聖女に効く眠り薬を入れたのよ。だから聖女でもヒールは出来ないの。これもあなたのためよ。このままここにいても悲しい思いをするだけですからね」

側妃の声が聞こえて、私は意識が亡くなったのだ。

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ここまで読んで頂いてありがとうございます。

アオイの運命やいかに?

続きは明日です。


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