第71話 草原の国にクリフを連れて行くことになりました
その夜は久しぶりにクリフと一緒に色々話した。
誘拐されたりしてしばらく離れていたし、私は話したいことがたくさんあったのだ。
本当はクリフと聖女様のことも色々聞きたかったけれど、それは聞けなかった。クリフがまだ好きだったら話しにくいだろうし……私も聞くのは嫌だし……
そして、気付いたらそのまま、温かいクリフのベッドで寝ていたのだ。
朝起きたらもう、クリフは仕事に行った後で、私はがっかりしたけれど、それ以上にエイミーに怒られてしまったんだけど……
「アオイ様。いくら皇太后様のお許しがあったと言っても、未婚の方どうしが同じベッドで共に寝られるなどこの世界では本来あり得ないことです……」
いやいや、エイミー、私もよくは知らないけれど、前の世界でも基本はそうだって。恋人は別だけれど、普通は兄妹でもないはずだ。
「まあ、クリフは私の保護者代理だから、親鳥になつくひな鳥って感じかな」
私が余計な事を言ってまた、エイミーに呆れられてしまったんだけど……
でも、私はクリフと元の仲に戻れてとても嬉しかった。一時期はもういらないって捨てられて宮殿を追放されたらどうしようと本当に悩んだんだから。
「昨日、何かいいことあったの、アオイ?」
お昼休みにポーラが聞いてきたくらいだ。
「えっ? ちょっと喧嘩していた人と仲直りできたって感じかな」
私が答えると
「なになに、その喧嘩した人って彼氏なの?」
ポーラが喜んで聞いてきたけれど、
「そんなんじゃないわよ」
私は即座に否定した。
「何だ、違うんだ」
ポーラはがっかりしてくれた。
「じゃあ、誰と喧嘩していたんだ?」
ボビーが横から聞いてきた。
「親代わりっていうか保護者代理って感じの人とかな」
「なによ、それ? まあ、仲直りできたんなら良いけれど。
それで、私の故郷に来る話はその保護者代理は許してしてくれたの?」
ポーラが聞いてきた件もクリフには話したのだが、
「その件なんだけど、護衛騎士をつけるって煩くて……」
「それなら良いわよ。私のところも従者はいるし」
「本当に良いの?」
「良いわよ。別に騎士の1人や2人」
ポーラはまったく気にしていないみたいだった。
「本当に! 良かった」
私はホッとした。クリフとせっかく仲直りできたのに、私がポーラの実家にこの休みに行きたいと言うと、条件を出してきた。それを認めないと行かさないとか言い出したのだ。
私は生まれて初めて友達と旅行ができると思ったのに、出来たら友達だけで行きたかったんだけど、アリストンの奴らがまた狙っているかも知れないじゃないかと言われると、反論できなかったのだ。
でも、本当に良いのかな? 連れて行っても? と思わなくもなかったんだけど……
「「「えっ?」」」
当日、私は護衛騎士の格好をしたクリフを連れて行ったら皆、目を丸くしていた。
「あ、アオイ、後ろの方って」
「私の護衛騎士のクリフよ。その後ろがケンさんとトムさんとジムさん」
私が皆を紹介する。
「ちょっと、アオイ!」
私はポーラらに端に連れて行かれた。
「ど、どういうことよ。何でクリフォード殿下がいらっしゃるの?」
ポーラが慌てて聞いてきた。
「えっ? 今は護衛のクリフよ」
私が白々しく言うが、
「いやいや、どう考えても、おかしいだろ」
「なんで、アオイの護衛騎士が殿下なんだよ」
「絶対に変だぞ」
3人とも言ってくれる。
「私は一人で行くって言ったんだけど、クリフが過保護で」
「いや、そう言う問題では」
「そもそも殿下を呼び捨てにしている段階でおかしいだろ」
「それはそうなんだけど、もう癖になっていて、この前も皇后様の前でつい言ってしまって侍女長に後でこってり怒られてしまったんだけど、中々直せなくて」
私は笑って言った。
「いや、そう言う問題じゃないだろ」
「というか、あなた、皇后様とあったことあるの?」
「まあ、それは……」
下手したら毎日こってりと色々絞られているんだけれど、それは言えない。
「そろそろいいかな」
後ろからクリフが声をかけてきた。
「えっ、いえ、あの、殿下」
ポーラがドギマギしていった。
「君はヴァーノン族のポーラさんだよね」
「えっ」
いきなり名前を言われてポーラは固まった。
「君が、バレー族のエイブ君、そして、君は騎士志望のボビー・アラコン君」
言われて男どもも驚いていた。
「いや、君たちのことはアオイから色々聞いているよ。アオイと仲良くしてくれてとても嬉しい。今回、俺の事はアオイの護衛として扱ってくれたら嬉しいかな」
「でも、殿下」
「ポーラ嬢、俺の事はクリフで良いよ」
「クリフ様ですか」
「いや、クリフと呼んでくれても」
「そんな滅相もない」
ポーラは首を振った。
「我々と一緒に我が故郷まで行かれて宜しいのですか?」
「俺は元々聖女の王配になる予定だったから弟と違って気楽な立場なんだよ。それに、先の大戦で活躍したヴァーノン族と親しくなることは帝国にとってプラスになるからね。父からもよろしくと言われているんだ」
「父って皇帝陛下ですか?」
ポーラが更に固まっていた。
そうか、陛下の許可得ているんだ。なら良いか。私は少し安心した。
また勝手に連れて行ってと文句を言われるのは私なんだから。
「それと強いと有名なバレー族の嫡男と国境騎士団で頭角を現しているアラコン騎士長の嫡男と親しくなりたいしね」
ニコリとしてクリフが言うんだけど。
「いえ、こちらこそ光栄です。殿、いや、クリフ様」
単純なエイブが真っ先にクリフに言っているんだけど。
ポーラはなんか赤くなっているし、ボビーは不満そうだけど。
「ボビー君もよろしく」
にこやかに笑って差し出すクリフの手を仕方なさそうにボビーは握っていた。
皆と握手すると
「じゃあそろそろ行こうか」
「「はい!」」
クリフの声に皆頷くんだけど、クリフが引率者みたいになっていて少し変じゃない?
まあ、こうして私達の旅は始まったのだ。
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