第10話 朝食の席で私は王子様に抱かれた事? になってしまいました……

翌朝起きた時は隣にクリフはいなかった。

「クリフ!」

慌てて周りを探すが見えない。


不安になって風呂場を除くと丁度クリフが風呂から出るところだった。

「きゃっ」

思わず目を両手で覆った。


「人を覗いて悲鳴を上げるやつがいるかよ」

クリフが文句を言ってきたが、男の人の素っ裸な姿なんて初めて見た。

この前クリフと一緒に寝た時は上半身だけだったし……


「だって、いないから気になって」

クリフを見ないように、私が後ろを向いて文句を言うと

「朝から鍛練をしていたんだ」

なるほど。クリフは体を鍛えるために朝練しているんだ。


私は感心した。筋肉を維持するのも大変なんだと。

私は何故か、最近ずうーっと筋肉痛なんだけど。

まあ、今まで寝たきりに近い生活だったから仕方がないと言えばそうなるんだけど。


風呂場から服を着て出てきたクリフは、何故か目に隈が出来ていたんだけど。

あんまり寝れなかったんだろうか?


ひょっとして私の寝相が悪くて良く寝れなかったんだろうか?


さすがにクリフに原因を聞いて、私に蹴られて飛び起きたとか言われたりしたら、恥ずかしくて立ち直れない。


ここは無視しようと私は思ったのだ。


昨夜はぐっすりと寝れたので、私はすこぶる機嫌が良かった。

「悪いが、朝は辺境伯らと一緒に食べてくれるか」

クリフに言われて

「でも、私マナーもなっていないし」

「その旨は、ある程度話してある。大丈夫だ」

「本当にそれで良いのなら」

私は頷いたのだ。まあ、最悪クリフのやり方を真似ればいいだろうと思ったのだ。


階下に降りる前にクリフの近衛騎士を紹介してもらった。


「ケンとトムとジムだ」

クリフが簡単に紹介してくれた。

3人が頭を下げてくれる。


何故かケンの頭にたんこぶが出来ていたんだけど、なんでだろう?

「アオイ・チハヤです」

私も頭を下げた。


3人が何か微妙な視線を私に向けてくるんだけど


「どうかしましたか?」

「いえ、何でもないです」

私が聞くが慌てて3人共視線をそらしてくれるんだけど。

何なんだろう?


クリフも不機嫌だ。聞こうにも聞ける雰囲気ではないみたいだし。




私達は迎えに来た辺境伯の侍女の人と一緒に階下に降りた。


侍女さんらの視線が何故か冷たく感じる。やはり皇子のクリフと私が親しいからだろうか?

でも、私はクリフの奴隷だし、親しいのは許して欲しい。まあ、奴隷扱いはされていないけれど。



部屋の前で辺境伯一家が私達を迎えてくれた。


「これは殿下。此度は無理言って一緒に食事して頂いてありがとうございます」

辺境伯が頭を下げて言ってくれた。

「アオイ様もありがとうございます」

辺境伯は私にまでお礼を言ってくれるんだけど、基本私は平民扱いでそんな丁寧な言葉はいらないと思うんだけど。私が何か言おうとしたらクリフに止められた。


各自の紹介があって、私はクリフからは王家の客人と紹介されたんだけど……

クリフの奴隷の間違いじゃないんだろうか?

クリフの方を見るとクリフが頷いているので私的には疑問符だらけなんだけど……


そのまま席に案内された。


でも、食事の前に、私は昨日の件を辺境伯夫人に謝ろうと思ったのだ。


「辺境伯夫人。昨日は折角、饗しの用意をしていただいていたのに、私の我儘で無駄になって申し訳ありませんでした」

私は私の前に座られた辺境伯夫人に丁寧に頭を下げた。


「いえ、構いませんのよ。お体の調子はもう大丈夫になったのですか? 体調を崩されたとお伺いしたのですが」

何か辺境伯夫人は嫌味っぽい感じなんかだけれど。まあ、昨日私がドタキャンさせたのだ。


「すみません。私、もともと病弱で、ほとんど外に出たこと無かったんです。しばらく大丈夫だったんですけれど、昨日は、騎士の方々に拷問にかけるぞって脅されて、三人がかりで襲いかかられたのがトラウマになってしまって……」

私の言葉に周りの人達がぎょっとしている


「襲いかかられた?」

伯爵婦人がギョッとして私を見てくれたんだけど。話を辺境伯から聞いていないんだろうか?


「そのまま押さえつけられて、爪を剥がされそうになって……」

ダメだ、また、その時の事を思い出した。

私の目に涙が光ってきた。


「ごめんなさい。そんな事を騎士達がしたなんて思ってもいなくて」

辺境伯婦人は立ち上がって私の横に来ると思わず私を抱き締めてくれた。


「ちょっと、あたな、それはどういう事ですの? うちの騎士達がこのようないたいけのない子供に襲いかかったって本当ですの?」

夫人が切れていた。


「いや、おまえ、これはだな、殿下が意識を失われたままで、こちらのお方が何か術をかけられたのではないかと疑って」

「どう見てもか弱い子供じゃない。騎士団長、うちの騎士団はいつから騎士の心をなくしたのですか」

「も、申し訳ありません。その件については昨日より何度も謝って」

「謝って済む話ではありません。聞く所によるとこの子を地下牢に放り込んだのですって。どうなっているのですか? 騎士団は。後で私の所にその当事者と共にいらっしゃい。判りましたね」

「はい」

騎士団長は頷くしか出来なかった。


「本当にごめんなさいね。騎士たちに脅されて怖かったでしょう! 昨日は怖くて寝れなかったのではないの?」

辺境伯夫人が態度をガラリと変えて聞いてくれた。

「いえ、あの、クリフ様が寝るまで側にいて頂きましたので」

「殿下。こんないたいけな子と昨日は夜を過ごされたと聞きましたが」

私の言葉に辺境伯夫人はきつい視線でクリフを睨みつけられたのだけど、やっぱり一緒に寝たのはまずかったのだろう。


「すみません。無理やりクリフ様に抱いてほしいとお願いしたのは私なんです」

「えっ?」

皆が固まった瞬間だった。私は皆が私の発言をどう取るかなんて全然理解できていなかったのだ。

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ここまで読んでいただいてありがとうございました。

今年もあと残すところ少しです。

ガンガン更新していきます!


今年は皆様方の応援のお陰で、レジーナブックスから『悪役令嬢に転生したけど、婚約破棄には興味ありません! 学園生活を満喫するのに忙しいです』https://www.regina-books.com/lineup/detail/1056603/9532

で、プロデビュー出来た夢のような1年でした。

更にその本がKADOKAWAさんのやっている『次にくるライトノベル大賞2023』にノミネートされたというもう、言葉もないくらい感動出来た一年間でした。

https://tsugirano.jp/nominate2023/


それもこれも全ては応援して頂けた皆様方のおかげです。


本当にありがとうございました。


この作品も一位目指して頑張ります!


応援よろしくお願いします!

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