第5話 転生令嬢は自重を捨てる


 時間帯的に見れば、多分遅めの昼ごはんに当たるのだろう。

 美味しい塩むすびでお腹を満たしたその直後、私は早速リトスの仮説を検証してみる事にした。


 まだ10歳で身体が小さいからなのか、塩むすび2個と麦茶(これもリトスには好評だった)だけでもお腹が満たされたので、動く気力が戻ってきたのだ。

 というか、蓄積されてた疲れまで全部吹っ飛んだけどね。


 こっちの世界で生まれてこの方、大体いつもこんな感じだ。

 例えどんだけヘトヘトに疲れていても、お腹一杯ご飯を食べさえすれば、私の身体は大抵それだけでケロッと回復してしまう。

 我ながら、大変お得な体質だと思います。


 生家の公爵家で毎度毎度継母にいじめられ、使用人達から日々雑な扱いをされても、大したダメージを受けずに済んでいたのは、性格含めたメンタル面の頑丈さだけじゃなく、この体質のお陰でもあった。


 でもって、ご飯のお陰で気力体力が充実した所で、ようやく私は洞窟の隅の方にポツンと置かれていた、カンテラタイプのLED照明を発見した。

 うわあ。そんな小さな物でもないのに、なにゆえこれに気付かずスルーしていたのか。どんだけご飯食べて横になりたい欲求で頭の中がパンパンだったんだよ。私。恥ずかしっ。


 まあアレだ。人間、空腹が解消されるだけで湧いてくる気力や、復活する注意力ってあるよね。

 お願いなのでそういう事にしておいて下さい。


 さて、そういう訳なので、さっさと気を取り直して検証開始と行こう。

 うーん……。そうだなぁ。

 まずは猛獣避けになりそうな、柵が出せるかやってみようか。

 さっきも言ったが、山の中には熊や狼が出る。幾ら寝床が整っていても、そんな状況じゃ安心して寝ていられない。柵を出せるんなら出したいじゃないか。


 リトスが固唾を呑むような顔で見守る中、私は脳内で妄想という名のイメージを固め始める。

 まず、柵の材質は鋼で、高さと幅はこの洞窟の手前と、私達が今いる奥まった部分を、ある程度きちんと区切れるくらい。


 地面や天井に杭を打って固定するタイプは、今の私とリトスじゃ設置できないから、柵を支える柱そのものが重しになってるタイプの物がいいだろう。

 んで、端っこの方に出入り用の小さな扉が付いていれば完璧だ。


 さあ、これでイメージは固まった。

 出て来い! 丈夫な柵! ていうかお願い出てきて下さい!


 洞窟の出入り口に向き直り、光の差し込む外を見据えてそう強く願った直後、さっき簀子一式が出てきた時と同じような、ぼふん、という音を伴いながら、目の前が一瞬白い煙で覆われ――

 煙が晴れた後には、私がイメージした通りの、金属製の柵が出現していた。


「ひえ、ホントに出た……!」


「うわあ、凄いや! プリム! 凄い凄い!」


 一度は「出て来て下さい」とか願っておきながら、やっぱりいざ目の前でこういう非常識な現象が起きると、思わずちょっと腰が引けてしまう私と、無邪気にはしゃぐリトス。

 やっぱり、純粋な子供ってのは順応性が高いなぁ。私には真似できないよ。


 第一、もしこの『強欲』のスキルに何かしらのマイナス面――例えば、スキルを使うごとに何かの対価を気付かないまま払っているとか、スキルを使うごとに悪業ポイントみたいなのが溜まっていって、そのポイントが一定値を超えると取り返しのつかない事になるとか、そういう部分がないとも言い切れないし……。

 分からない部分が多過ぎて、素直に検証の成功を喜べないって言うか……。


 いやダメだ、こんな事ではいかん。

 私も現実を受け入れて、とっとと頭を切り替えねば。

 大体、このスキルの悪い部分ばかりを考えて、使うのに二の足を踏んでウダウダしてる余裕なんて、今の私にはないはずだ。


 今の私達は孤立無援。助けの手を差し伸べてくれる大人なんてどこにもいない。私達はこれから先、自分達だけの力で生きて行かなければならないのだ。

 だったら、今持ち合わせがある力を、積極的に活用していくべきでしょうよ。


 そうだ! 私達は何がなんでも生き延びてやるんだ!

 あんなクソッタレ共の思惑通り、山の中で野垂れ死んで堪るもんか!


 こうして私は、生き延びる為に細かい事を考えるのをやめ、脳内に残されていた自重の二文字も、全てまるっと捨て去る事にした。

 そしてその結果。

 数日後には洞窟のすぐ側に、小さくもしっかりした造りのログハウスが一軒、爆誕する事となったのである。


 ちょっと、思い切りが良過ぎたかも知れない。



 私達が山に捨てられてから、10日が経過した。

 山に捨てられた日からその辺の石を使って、洞窟の入り口付近に朝が来るたび、『正』の字を書く形で印を入れ、日数を数えているので間違いない。


 ちなみに、私達の生活環境はある意味、王都で暮らしていた時より向上していた。

 まさか出せるとは思ってなかったけど、マイホームとするべく出したログハウスの中は、天井に吊るされた明るい照明にベッドが2つ、それからテーブルセット一式があり、壁際にはコンパクトなキッチンも設置されている。


 ログハウスの周囲には柵を設置して庭を作り、中に猛獣が入って来られないようにした。これでいつもで安心して過ごせるし、設置した物干し台で洗濯物を干す事も可能だ。

 当然ながら着替えも幾らか出してるんで、洗濯できないのは困るのです。


 食べ物にも困っていない。なんせ、現代日本で売ってるような、出来合いの総菜やらレトルト食品、果てはお菓子までもがスキルの力で出し放題だから。美味しいものがいつでも気軽に食べられる。


 ただ、キッチンはあんまり使ってないんだよね。

 私もリトスもまだチビなせいで、キッチンの設備は踏み台を使わないと手が届かない所が大半だから、精々水道の蛇口をひねる時か、レトルト食品を鍋であっためたりする時くらいしか、使いどころがないのです。


 あと最初に、リトスは洗濯係で私がご飯係、掃除は2人で一緒にやる、という決め事を作った。大事だと思うんだ、役割分担って。

 しかし、決め事を作ってそれを実行しながら生活しているうち、これってよく考えたらリトスの方が、私より多く家事に労力を割いているのでは、と気付き、洗濯も一緒にやろうと提案したのだが、固辞されてしまった。


 リトス曰く「洗濯は楽しいから、1人でやっててもそんなに大変じゃない」との事だが、多分それって、今の住環境の大半を私が整え、自分は何もしてないっていう引け目から出た言葉なんじゃないかな、と思っている。

 なので、いずれこの暮らしにもっと慣れたら、改めて腹を割って話し合う機会を設けよう、と心の中で決めた。


 だって私、スキルで色々揃えたってだけで、その後はこれと言ってなんも苦労してないんだよ。自分の割り当ての仕事が終わった後は、ひたすらゴロゴロぐうたらしてるだけなんだよ。

 その一方で、まだ8歳の男の子が気を遣い、率先して肉体労働買って出てるような状態を、なんも手を打たずにほったらかすほど腐ってないから。私。


 話を戻すけど、ログハウスの外には、浄水機能がついた水を溜めておくタンクもあって、普段は雨水を活用している。

 なんだかこの辺、よく雨が降るみたいなのでそうしたんだけど、もし長く雨が降らない時には、私がスキルで水を出して溜める事にした。


 実際、もう2、3回くらいスキルでタンクに水を足してるが、別に言うほど手間じゃない。

 当然、風呂とトイレ(勿論水洗です)と洗濯機も併設済み。ついでに小型の冷蔵庫も出して、ある程度の食糧保存も可能にしてみた。

 その辺の設備を動かす動力は、やや大きめの発電機2つと、屋根に設置してあるソーラーパネルの発電で賄っている。まさかのオール電化ってやつだ。


 ソーラーパネルでの発電を行うに当たって、邪魔になりそうな周りの木々も、「邪魔だから取り除きたいなあ」と思ったら、なんか普通に消せちゃいました。

 多分だけど、これもスキル『強欲』の力なんだと思われる。

 つまり、「こういうのがあったらいいな」という考えだけでなく、「これがなくなってくれたらいいのにな」という考えも、欲望に則した感情だって事なんだろう。


 その事に気付いてからはゴミも出なくなった。

 だって、「このゴミなくなって欲しい」と思うだけで、この場からゴミを消せるんだから。こんな楽な事ってあります?

 ホントに超がつくほどのチートだよ。このスキル。めっちゃ助かる。ありがとう。


 ただ、スキルの恩恵によって近代的な暮らしを送る一方、私もリトスも、この世界の一般的な平民の暮らしに馴染めるよう、火熾しや薪割りなど、ちょっとしたアウトドア経験も積むようにしている。

 いつまで私の『強欲』スキルが、その効力を発揮してくれるか不明だからだ。


 それに――リトスには言ってないが、スキルの持ち主である私がリトスより先に死ぬ可能性だって、十分考えられる。

 勿論、そんな事になるなんて私自身嫌だし、気を付けるつもりではいるけど、世の中に絶対なんてものはないし……。


 ……ああヤダヤダ。辛気臭い事考えちゃった。

 こんな事考えるくらいなら、今日の晩御飯の事でも考えよう。昨日はミートソースパスタがメインのイタリアンだったから、今日は中華にでもしようかな。


「――プリム! 大変っ! 大変だよ! 家の側で倒れてる人がいるんだ!」


 リトスが血相を変えて私の所へ駆け込んで来たのは、まだ灯りを点けずとも十分明るいログハウスの中、テーブルに頬杖ついて今日の夕飯のメニューに思いを馳せている時だった。



「こっち! こっちだよプリム!」


 リトスに案内されるがまま、急ぎ駆けつけた崖の下には、頭から血を流した金髪の男性が深く項垂れた格好で、力なく座り込んでいた。

 よかった。見た感じ、意識がないほどの重傷って訳でもなさそうだ。


「おじさん! 大丈夫!? 友達を呼んで来たよ!」


「……あ、あぁ……。すまんなぁ。坊や……」


 リトスが男性の傍にしゃがみ込んで声をかけると、うなだれていた男性がノロノロと顔を上げる。

 ……うわ。めっちゃイケメンじゃん。

 土やら泥やらで全身汚れちゃいるが、これ多分、短く刈り込んでる髪は豪奢な黄金色だし、ぱっちりした二重の瞳は、光にかざしたエメラルドを思わせる明るい翠だ。


 服装は質素ながらも厚手。しかし、そんな服の上からでも分かるほど、全体的に筋肉質な身体つきをしている。背中を丸めて座り込んでるからよく分かんないけど、上背もかなりありそうだ。


 つーかリトス君よ。そもそもこの人見た感じ、『おじさん』って呼んでいい歳じゃなさそうなんだけど。

 精々、20代後半から30代前半って所だよ? だとしたら、まだ十分『お兄さん』で通る歳だと思うんですが。


 それとも、この世界の平均寿命から見れば、20代後半を過ぎた大人はみんな、おじさんおばさんになってしまうんだろうか。

 やだ、もしそうだとするなら私(の中身)なんて、もうおばあちゃんじゃん……。軽くショックだわ……。


「お嬢ちゃんもすまんなぁ。こんな、どこの誰かも分からんおっさんのせいで、滑落事故があったばかりの場所に連れて来られてしまって……」


 私が人知れずショックを受けていると、お兄さんは端正な面立ちを分かりやすく曇らせ、申し訳なさそうな声で言う。

 あ、やば。やっちまった。私今、思ってた事が顔に出てたのかも知れん。

 初対面の相手、それも怪我人に気を遣わせてしまうとは何たる失態。社会人としてあるまじき行為ですよ! もう!


「いえ、こっちこそごめんなさい。別に私、ここに来るのが嫌でしょぼくれてたんじゃないですよ? その、お兄さんの怪我が酷そうだったから……」


「はっは、お嬢ちゃんもなかなか気遣い屋だな。俺ももう30を過ぎたいい歳だ、普通におじさんと呼んでくれて構わんよ。それに、見た目ほど酷い怪我をしてるって訳でもないんだ。……ほら、左足を見てみるといい」


 あー……。やっぱもう30過ぎたら、おじさんおばさん枠に突入なんだ……。

 私は再び地味にショックを受けつつ、苦く笑うお兄さん(実年齢が40近い私には、とてもじゃないがこの人をおじさん呼ばわりなんてできん)に言われるがまま、その左足に視線を向ける。


 痛ましい事に、お兄さんの膝から下の足は、幾つかの大きな石の下敷きになっていた。多分、落石にやられたんだろう。さっき自分で、滑落事故があったとか言ってたし、崖の上から落ちた挙句、後続の落石に巻き込まれたんだな。気の毒に。


「情けない話、この石っころに足を挟まれててなあ。身動きが取れなくなってるんだよ」


 嘆息混じりに言うお兄さん。

 しかし、本当に怪我は大丈夫なんだろうか。だって、お兄さんの足の上に乗ってる石のうちの1つは、もはや岩と呼んでもいいほどのサイズだ。

 これ下手したら足の骨、折れるの通り越して砕けてるんじゃあ……。


「優しいお嬢ちゃん、そう不安そうな顔をしないでくれ。今は訳あって山で猟師をしているが、一応俺は、元はレカニス王国に籍を置いていた貧乏貴族の末子でな。身体強化魔法で力や打たれ強さを底上げする事もできる。


 だから、本当に大した怪我はしてないんだよ。……まあもっとも、身を守る事に魔力を全振りしたせいで、力を上げて石を取り除くだけの魔力が、もう残ってないんだけどな」


 お兄さんは後ろ頭を掻きながら、「俺もヤキが回ったもんだよ」と、また苦く笑う。


「……そうですか。じゃあこの石は私が退けます。ちゃんとした身体強化魔法は使えませんけど、私は魔力が高いので、一時的な筋力補正ならできます。だから、リトスはここに私を連れて来たんですよ」


「お嬢ちゃんがかい? それは……いや、その金の右目を見れば、君の魔力がどれほど高いかよく分かる。手数をかけて申し訳ないが、お願いできるだろうか」


「はい。ちょっと待ってて下さいね。……ん、しょっ、と……」


 私は早速、お兄さんの足の上に乗っている石やら岩やらを退かしにかかる。

 ……うん。重いっちゃ重いけど、意識的に魔力を腕に通わせれば大丈夫。持ち上げられないほどの重さじゃない。少しばかり時間はかかったが、どれも普通に退かす事ができた。


「――ふう。これでよし。立てますか?」


「ああ……本当に助かった。ありがとうお嬢ちゃん。そっちの坊やも。君達のお陰で無事に村まで帰れそうだ」


 お兄さんは心からホッとしたような顔で、ふう、と息を吐きながら立ち上がる。

 うん、今の私がチビな事を差し引いても、だいぶ背が高い。180オーバーは確実と見た。

 それから当人の言う通り、頭の方も含め、大した事は怪我はしてないみたいだ。ピンピンしていらっしゃいます。


「そう言えば、まだ名乗っていなかったな。俺はアステール。さっきも言ったが元レカニス王国の貴族で、今は身分を捨てて、ここから少し先にある、ザルツ村って所で猟師をしている者だ」


「私はプリムって言います。こっちは友達のリトス。実は私達、ちょっと王都で色々あって、追放されちゃって……」


「ぷ、プリム! それ、喋っちゃっていいの?」


 ぎょっとするリトスに、私は微塵も出っ張りのない胸を堂々と張りながら、「いいわよ」と断言する。


「だって私、アステールさんに隠さなくちゃいけないような、悪い事なんてして何もしてないもの。リトスだってそうじゃない」


「……そ、それは……そうだけど……」


「やはり、君達は訳ありだったのか。どこから見ても平民の子とは思えなかったし、そもそも、こんな人里から遠く離れた場所に、子供2人だけでいるなんておかしいとは思っていたが……」


 アステールさんは顎に手をやりながら、ふーむ、と唸るが、私達に対して嫌な顔はしなかった。


「なあ。いきなりですまないが、君達の『事情』とやらを話してみてくれないか? 正直、何となく察しは付いてるんだが……やはり直接聞いておきたいんだ。

 勿論、どんな話を聞いても、決して君達に危害は加えないと約束する。これでもかつては騎士の称号を得ていた身だ。その誇りに懸けて約束を違えはしない。……どうだろうか」


 アステールさんはわざわざ私の目の前で膝を折り、握った右手を自分の心臓のある位置へ重ねた。

 公爵家の本で見た事がある。これは、自ら信ずるに値すると認めた者に対して騎士が取る、敬服の礼だ。

 私を見据える眼差しも、真っ直ぐで真摯だった。


 一体何があって、貴族をやめて猟師になったのかは分からないけど、きっとこの人はたくさんの人達から信頼される、立派な騎士様だったんだろうな。


 よし。信じよう。こんな子供に対してまで、真摯な態度で筋を通そうとしてくれてるんだから。

 それに私も、かつては社会人の端くれとして、不特定多数の人間と関わりながら生きていた女。

 人を見る目には多少の自信がございます。


「分かりました。あなたを信じて全てお話します。実は――」


 私は全面的にアステールさんを信用すると決め、自分達の元の身分を含め、ここに至るまでの経緯を話して聞かせた。


 リトスの家族であるクソ国王夫妻とカス王太子、及びウチの毒親+αの事を詳しく話すのは未だに胸糞悪いので、その辺の事は適当に端折りつつ話をする事数分。

 やがて全ての話を聞き終えると、アステールさんは空を仰ぎながら、はあぁ、という、それはそれは大きなため息をついた。


「……そうか。あの国は、未だにそんなバカげた迷信に凝り固まって、ふざけた真似をしているのか……。

 しかも、一時とはいえ王子の婚約者を引き受けてくれていた令嬢や、血を分けた我が子にまでそんな仕打ちを……。全く、邪悪なのはどっちだ……!」


「あの、アステールさんも、知ってるんですか? 大罪系スキルの事……」


 リトスがおずおず問いかけると、アステールさんは苦々しい顔で「まあ、昔は一応それなりの身分だったしな」と首肯する。


「それに……俺が子供の頃にもあったんだよ。スキル鑑定の儀で、大罪系スキルを持った子供が発見された事が。もっとも、その子は男爵家の末子で身分が低かった事もあって、その場で処刑されてしまったけどな……」


「そんな……」


 リトスは、まるで自分の事のように泣きそうな顔をして唇を噛む。

 アステールさんは目を細め、そんなリトスの頭を優しく撫でてくれた。


「……所で、君達は自分が得ている大罪系スキルの権能……スキルがもたらす力を、全てきちんと知ってるのか?」


「……いいえ。一応、私の持ってる『強欲』のスキルで、色んなものを出したり消したりできる事は、分かってますけど……」


「ふむ。やはりか。――プリム、リトス。これは提案なんだが、俺の住んでる村に……ザルツ村に来ないか? 実は、うちの村の村長は昔、宮廷司書をやってた博識な人でな。恐らく、大罪系スキルの事に関しても色々と知っていると思う。


 持って生まれたスキルは、基本捨てる事も消す事もできん。つまり、一生の付き合いになる力だと言っても過言じゃない。それを踏まえれば、一度あの人の話を聞いてみるのも悪くないと思うんだが……どうだ?」


「……。そう、ですね。私もちゃんと、自分の力について知っておきたいです。お願いできますか? リトスもいいよね?」


「う、うん。僕も、知りたいかな。僕が持ってるスキルの事……」


「よし分かった! それじゃあ早速村へ行くか! ここからそんなに遠い場所じゃないから、日が暮れる前には着くはずだ」


 アステールさんは私達に向かって、茶目っ気たっぷりの笑顔でサムズアップした。

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