第24話 本当に何なんだこの人達は……
私がヌシオークを倒したと同時に、オークの群れは全滅となった。
無事だったコユミが、パタパタとこちらに向かって来る。
「狂拳さん、お疲れ様です! 今さっきのスキル披露、凄かったですね!」
「そうだね。私としては、マジで発動するなんて思わなかったけどさ。武器が持てないバグの状態だし」
「あー、きっと全身武器だと思われたんでしょうね。狂拳さんって実際そうですし」
熟練ハンター故か、コユミには私の言いたい事が分かったらしい。
しかも全身武器っておま。しかも反論出来ないのがまた。
「それよりも、狂拳さんの活躍で同接が30万行きましたよ!! ほんと狂拳先輩はパネェっす!! リスペクトしちゃいますってこんな!!」
「リスペクトって……。まぁ、私も豚どもを殺せて凄い面白かったなぁ」
〈同接よりも虐殺プレイの方が嬉しかったんか()〉
〈そもそも狂拳先輩は配信に興味ない方ですし。こうしてコユミちゃんと契約してなかったらソロプレイしてただろうさ〉
〈というかさっきのオークの虐殺……滅多にない光景だったな……〉
〈1体1体が上級だもんなぁ。そのおかげでハンターのほとんどがやられてしまったし〉
〈よっぽど、タラスクのスキルと狂拳先輩の相性がよかっただろうなぁ……賞賛よりも驚愕が勝るわ〉
〈ぶっちゃけ熟練ハンターが束でかかっても、狂拳先輩には勝てなさそう〉
〈↑それはないだろ……ないよね?〉
何か熟練ハンターでも私に勝てないとかコメントが見えたけど、そんな事はないと思うけどなぁ。
確かに裸でタラスクを倒したが、それで熟練ハンターに勝てるかというと別問題な訳で。
そもそもクリーチャーと戦えれば十分だから、ハンターと戦おうなんて考えには至らないんだわ。
……というかそれよりも、
「いやぁ、見事だったぜ!! ここまでヌシ達を圧倒させるとは!!」
考え事をしていた時、大きな声とパチパチという音が聞こえてくる。
情報屋が拍手しながらこちらに近付いてきたからだ。
「こうして《紅蓮の狂拳》の活躍を見れたのは、実に幸運だったよ。そりゃあ、ファンがいっぱい出来るわな!」
「世辞はいいよ。それよりもさっきの情報、早く聞かせてほしいんだけど」
「何でぇ、人がせっかく褒めてんのに。まぁとにかく、その新種クリーチャーってのはどうもドラゴン系らしくてな、褐色の体表と前に伸びた角が特徴だ。名前は未確認なんだがな」
「おお、ドラゴン! それは期待出来ますね!!」
「そりゃよかった。ただしソイツがまた結構凶暴らしくてな、人知れずクリーチャーを殺し回りながら徘徊したり、果てには仲間が目を合わせた瞬間に襲われたりしたんだとよ。ちなみに情報からして、この方角に存在する渓谷に潜んでいるらしいぜ」
〈聞いたか! 新種クリーチャーの居場所!?〉
〈しかもドラゴン系とか、絶対にレア素材出んじゃん!!〉
〈情報屋が指差した通りだと、拠点から北西に渓谷があると見た!〉
〈よしメモった!! 後はそっちに向かうだけ!!〉
〈狂拳先輩、コユミちゃん、すいやせんが獲物を横取りすると思います!! 恨まないで下せぇ!!〉
〈ハンターとして、新種クリーチャーに飛び付かない訳にはいかんのよなぁ!!〉
「……ほんっと、リスナーは素材渡さねぇ癖に盗み聞きだけはいっちょ前で……。あんまりコイツらの前では言いたくなかったんだけどなぁ……」
躍起になるリスナーにうなだれる情報屋。
確かに、自分達が集めた情報がこうも筒抜けだとやりきれないか。
「ハァ……とにかくお前さんらのファンどもが、新種モンスターに集まるみてぇだ。横取りされても俺を恨むなよ?」
「もちろん覚悟の上ですよ! むしろこういうのがあるからこそ《クリワイ》が面白いんですし! ねぇ、狂拳さん!?」
「んー? 別にその新種がやられても、別の強い奴を探すまでだよ」
「もー! そこは嘘でも『まぁね』って言って下さいよー!」
そう言われてもねぇ。そういうゲームだから仕方ないとしか。
もちろん、その凶暴だという新種クリーチャーに興味がない訳ではないが。
「情報はこれで終わり?」
「ああ、これで全部。後は自分達で何とかしな」
「だってコユミ。早い事、その渓谷に行こうか」
「そうですね! ……でないと巻き添えを喰らいそうですし……」
コユミがそう言って振り向いた先には、
「おいそれは俺のロースだぞ!! 何奪ってんだ!!」
「ハア!? それは俺のだぞオメェ!!」
「これは全部俺のだぁ!! 文句ある奴はかかってこいや!!」
「野郎ぶっころしてやらぁ!!」
戦場跡に散乱したハンターやオークの素材を巡って、生き残りのハンター達が奪い合いと殺し合いをしているのだ。
本当に何なんだこの人達は……。
なお私もヌシオークの素材を回収しているが、それは《闘猪獣の上質ロース》というレアでも高性能でもない微妙なものだった。
一応食材なので取っておくつもりだが。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます