第17話 とある人物 Side

「そろそろですかねぇ、チー牛」


 アパート内の自宅でラノベを読んでいるのは、この私――家城小由美やしろこゆみです。

 そう、有名配信者と名をはせているコユミの正体でもあります!


 現在とある高校の1年でして、その高校に通う為に1人暮らしをしています。

 そうして学校ライフを送りつつ配信者を生業しているのはご周知の通りかと。


 ――ピーポーン。


「あっ、そろそろ来ましたかね?」


 ウーバーフードが到着したようです。

 私は自炊もちゃんと出来るのですが、たまには手抜きをしたいと思う時がありまして。


 玄関のドアを開けてみれば、いかにもズボラそうな女の人が立っていました。


「ウーバーフードです。ご注文品をお届けに参りました」


「あー、ありがとうございます! 助かりましたぁ!」


 女の人からチー牛を受け取ってと……うーん、手元に伝わるこの温かさと美味しい匂い!

 ヨダレが出てしまいそうです!


 ただそうやって入り浸っていると、何故か女の人がこちらをジッと見つめてきます。

 顔に何か付いているんですかね?

 

「どうしました?」


「ああいや……毎度どうも。またのご利用をお待ちしております」

 

「はい、ご苦労様です!」


 女の人は一礼をしてから、私の元を去っていきました。


 ……ちょっとだけアカネさんに似ているような気もしますが、まぁさすがに同一人物という事はないでしょう。

 こういうズボラな人なんていくらでもいるでしょうし。


「さて、アカウントのチェックしながらチー牛を食べますか」


 私のツイックスのアカウント『KOYUMIちゃんねる!!』には、常に多くのリツイートなどが舞い込みます。

 それらを処理するのも、配信者の役目であり仕事でもあります。


 ちなみに、私は本来Vチューバーとして活動しているのですが、それを始めたのはかれこれ3年前。

 私が中学1年の頃です。


 その時に私、軽い気持ちで宝くじを買ったんですよ。


 別に一攫千金を狙っていた訳でもなくて、単に「当たったらいいなぁ」といった感覚でして。

 もし当たらなかったとしても、それはそれでいいやと思っていたんです。


 ところがその宝くじが、当たってしまったんです。


 2等の500万円……そう、汗水垂らして数十年で溜まると言われるほどの高額を!

 それを知った時には思わず「アバババア!!」と泡を吹きながら倒れこみましたね! まぁ嘘ですが!


 さすがにこんな大金をどうすればいいのかと悩んでいたのですが、幸いにも両親は奪い取ろうとか思わず「小由美の好きに使うといい」と言ってくれました。

 

 私はそう言われ、使い道を考えました。

 貯金するのもいいのですが、どうせならこの大金でやりたい事をやってみようと。


 そうして悩みに悩んだ結果、私が行きついたのが……そうVチューバーです。


 結構Vチューバーとか配信とかが好きで、よくそういった動画を見ているんです。

 だからこそ、私もVチューバーになりたいと決心した訳です。


『Vチューバーとして人気者になってみせます!』


 その言葉を皮切りに、私は500万をVチューバー用の機材や3Dモデル発注につぎ込んでいきました。

 そうして苦労に苦労を重ね、今の私……コユミが誕生した訳です。


「いやぁ、あの時は本当に苦労しましたねぇ~。今となっては良い思い出ですけど」


 私は熱々のチー牛を食べながら、過去を振り返ります。

 

 個人勢で初めたという事もあって、最初の登録者数はポツリポツリと5人程度でした。

 見て下さる方がいるのは嬉しいですが、このまま増えなかったらどうしようという不安もあって……夜も眠れない日が結構ありましたね。


 ですがめげずに配信を繰り返した結果、今の100万に突破。

 名実ともに有名配信者になれた訳で、今の私はもう有頂天この上ないです!


 ……とまぁもちろん、の事は決して忘れていないのですが。


〈コユミちゃん、次の配信にも《紅蓮の狂拳》来るよね!?〉


〈狂拳先輩の虐殺プレイ、楽しみだなぁ!!〉


〈初めまして!! 狂拳先輩のプレイに圧倒されて来ました!! フォロー失礼しますね!!〉


 リツイートに続々と出てくる狂拳という名前。

 言うまでもなく、《紅蓮の狂拳》ことアカネさんの事です。


 元々配信に興味のなかったハンターで、紆余曲折あって私のコラボ相手になった人。

 平均10万だった同接が2倍の20万を記録したのも、登録者数20万増えたのもこの人のおかげ! まさに頭が上がらないとはこの事ですね!


〈フォロー失礼します! 狂拳先輩の活躍を見てファンになりました!! 虐殺クリーク!! 虐殺クリーク!! 虐殺クリーク!!〉

 

 ……ただこれですと、アカネさんがメインで私がオマケみたいになっているような……。


 というか私のアカウント、乗っ取られてません? 

 アカネさんのアカウントが『アイイインンン』という特定される気ゼロな名前だから、仕方ないと言えば仕方ないのですが……。

 

 これじゃまるで……これじゃまるで……




 私がアカネさんに貢献しているって事じゃないですかあああ!!


 いやぁ、アカネさんの一番の舎弟であり続ける自身としては、嬉しいこの上ないです! 

 これを機に、ドンドン《紅蓮の狂拳》の名が知れ渡ってほしいですね!!


 まぁ、もちろん訂正は必要ですがね。


〈フォローありがとうございます!! めっちゃ嬉しいです!! ただこれはあくまで私のアカウントですので、私の事もぜひ応援して下さいね!!〉


〈もちろん忘れてないよ、コユミちゃん! ダンジョンのアイアタル戦、ちゃんと見てたよ!!〉


〈アイアタル2体も倒したコユミちゃん、マジで凄かった!!〉


〈コユミちゃん、応援してます!!〉


 私の返信に対して、応援のリツイートが続々と……。

 ああ……なんて優しい世界!! やはり配信者をやってよかったですね!!


「フフフ……それでしたら今日も行きましょうかねぇ……」


 私はアカウント『アイイインンン』……要はアカネさんへとメッセージを送りました。

 後は彼女の返信を待つだけです。


 さぁて、どんな配信になるのか楽しみですね!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る