第9話 アカネとコユミのコラボ配信

「みなさ~んこんにちです~! 本日もコユミの配信にお越しいただきありがとうございま~す!!」


〈こんにちでーす!!〉

〈今日もコユミちゃんカワイイヤッター!!〉

〈コユミちゃん来たよおおお!!〉

〈今日もどんなプレイ見せてくれるのが楽しみでーす!!〉


「皆さんの声援、とっても嬉しいで~す! という訳で早速プレイを……と行きたいですが、実はここで皆さんにお伝えしたい事があります!」


〈お伝えしたい事?〉

〈まさか……引退発表とか……?〉


「あっ、いえいえ! そんなんじゃないですって! この通りソロプレイをしてる私なんですが、実は今回とある有名ハンターさんを捕まえましてですね。そのハンターさんと交渉を重ねた末、一緒に《クリワイ》をプレイする事になりました! 言わば常時コラボ配信です!!」


〈おおおコラボ!!〉

〈常時だなんて贅沢な!!〉

〈しかも捕まえたってwww言い方www〉

〈ていうか有名ハンターってもしかして……〉

〈まさかのまさかの……?〉


「察し付いたリスナーさんもいるようなので、あまりもったいぶらず行きましょうか! このたびコラボしてくれるのは、虐殺撲殺何でもござれのバズりハンター《紅蓮の狂拳》さんです!!」




「……………………」




「狂拳さん!! カメラ!! カメラ回ってますって!!」


「えっ? ああ……まぁどうも。ぐれんのきょうけんです」


〈《紅蓮の狂拳》来たあああああああ!!〉

〈やっぱりかあああああ!! コユミちゃんが捜しているとか言ってたもんな!!〉

〈となると某ハンターの動画で煙幕出したの、やっぱりコユミちゃんだったのか〉

〈某ハンター、《紅蓮の狂拳》がいなくなって「あァァァんまりだァァアァ!!!」って泣いていたなww〉

〈まぁ某ハンターには興味なかったら残当〉

〈てか《紅蓮の狂拳》、凄い塩対応だなww〉

〈チャンネルもツイックスもやってないし、配信に興味ないんだろうな〉

〈でもイケイケに挨拶とか、それはそれで違うからなぁ。これでいいと思う〉

〈↑確かに〉

〈初めまして《紅蓮の狂拳》さん!! 私、女なんですけどあなたに夢中です!! これからも応援しますね!!〉


 ……私が画面に出て来た途端にコレとか、ほんと世の中って分からないもんだ。


 という訳で、私はコユミの配信動画に顔を出す事になったのだが、配信のイロハすら分からないので色々適当になっている。

 もっともリスナーの反応から見るにこれでいいらしいので、このままの感じで行く事になるが。


 それとコユミから事前に「名前ではなく《紅蓮の狂拳》で名乗った方がいいです」と釘を刺されている。

 自分は配信者とかではないから名前を明かす必要はないし、《紅蓮の狂拳》の方がリスナー達に伝わりやすいからなんだとか。


 なお《紅蓮の狂拳》の由来はコユミから聞いているものの、それがまさか掲示板出典だったとは。

 正直その名を口にするのは妙な気分になるが、名前を明かしたくもないので背に腹は代えられない。


〈にしても、《紅蓮の狂拳》の本当の名前って何だろう?〉


「あっ、あくまで配信者じゃないので名前は出さない方針なんです。それでこの狂拳さん、まだ《クリワイ》をやり始めたばかりの初心者らしいので、私が色々と教えながらのプレイになるかと。そこんとこはぜひともご了承下さいね!」


〈オーキードーキー〉

〈むしろ初々しい《紅蓮の狂拳》が見れるので嬉しいです!〉

〈てか、あれだけの戦闘力を見せておきながら初心者だったのか……。世界は本当に広いんだな……〉

〈↑まぁ《クリワイ》は地球8個分あるしな〉

〈↑そういう意味じゃないww〉

〈↑誰が上手い事を言えとwww〉


「リスナーさんのご厚意嬉しいです!! それでは狂拳さん、ここら辺に《ゲンキノコ》が生えてますので収穫を……」


「ああいいよ。別に拾う必要ない」


「ええええ!? 拾う必要がないって!! もしかしてゲンキノコの効果を……」


「知ってる。そのキノコと魔物の素材を《ビルド》で加工して、《回復薬》って感じなんでしょ? 私は喰らったら一撃死するから必要ないってだけ」


 ちなみに先ほど、コユミが配信者ハンターに使っていた《エンマクダマ》と《ネンチャクダマ》も《ビルド》の産物のはずだ。

 どのような作り方なのかは忘れたが。


「まぁ、初心者ですからね。でもこれから防具を作っていくんですよね?」


「あー言ってなかったっけ? 私、防具を付けれないんだよ」


「えっ?」


〈はっ?〉

〈はっ?〉

〈はっ?〉

〈ホワイ?〉


 やっぱり言っていなかったみたいだ。

 なのでバグにより装備が使えない事、今の戦闘能力は現実世界のアビリティが由来になっている事を伝えた。


「はぁ、そういう事だったんですか。それなら色々と納得出来るものがあります」


〈ある掲示板で今の狂拳はペナルティだらけだって聞いたんだけど、その為だったのか〉

〈何事も完璧に美味い話はないって事だ〉

〈てか現実世界のアビリティって……もしかして格闘技か何か習ってたの?〉


「まぁ、そんなところ」


〈つまり現実での狂拳に殴られたら、ダークリザードのようになってしまうと……〉

〈ひえっ〉

〈ダークリザードを引き千切れるパワーあるもんな……恐ろしいわ……〉

〈《紅蓮の狂拳》さん、今までナメた口利いてすみませんでした。許して下さい(土下座ブリッジ)〉

〈↑全然、謝罪がこもってなくて草〉


「さすがに現実でそんな事……ていうか早く攻略とかしたいし、そろそろ行かない?」


「ああ、失礼しました! 実は先ほど出来たっぽいダンジョンがありましたので、そこに狂拳さんを連れて行こうかなって思うんですけど!」


〈それって、狂拳さんを見つけた後に攻略したダンジョンとは別?〉


「はい! しかも未だ攻略したハンターがいないらしいので、かなりの高難易度に違いないですね!」


 ダンジョン! いよいよそこに向かう事になるのか!

 このエリアでは中々クリーチャーが見えないものだから、その展開は実に嬉しい。


 ダンジョンと言えばクリーチャーの宝庫なので、必然的に奴らに会えるはずだ。


「何だ、早く言ってくれればよかったのに。ならさっさと行こうか」


「まぁ、そう焦らず! ダンジョンはそれなりの距離がありますので……《ワープ》!」


 そう唱えた瞬間、彼女の身体が真っ白な光に包まれる。


《ワープ》――ハンターが初期から持っている2つのスキルの片方だ(そしてもう1つが、私がさっきやった《ビルド》)。

 これを唱えれば一度行った場所に瞬間移動出来るという、いわゆる「ファストトラベル」のような効果がある。


 もちろん私も持っているが、未だ重要な場所とかに行ってないので使用は出来ない。


「さっ、捕まって! 使用者に触れれば同時にワープ出来ます!」


 コユミが私に対して手を伸ばしてくる。

 

 まるで楽しいものへと誘うようなその仕草。

 私は自分の手を上げ、そっとコユミのやつを掴んだ。


「って、何故にローブ!? 普通手じゃないんですか!?」


「いや、別に手じゃなくてもいいのかなって」


「雰囲気があるんですよ雰囲気が!! と、とにかく、私達はダンジョンへと直行します!!」


〈まるで漫才だな(笑)〉

〈何かこう外す感じがいいなぁ。狂拳のこういうキャラ好き〉

〈俺的には手を握り合う百合シーンが見たかった……〉

〈↑涙拭け〉


 そんなコメントが流れている間、私達の身体が光に包まれファストトラベルしていった。


 ―――――――――――――――――――――――――――――――――


 若干スローペースになってしまって申し訳ございません! 次回はいよいよダンジョンでの戦闘が始まります!

「面白い」「続きが気になる」と思った方は、ぜひとも☆や応援コメやレビューよろしくお願いします!

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