第35話 アカネ専門掲示板&とある人物 Side

【クリーク】《クリワイ》配信界の絶望の星《紅蓮の狂拳》を扱うスレ Part54【顔面破壊ハンター】


 123:名無し。私の好きな言葉です。

 おい見たか!? 狂拳先輩が手に入れたスキルのやつ!?

 

 124:名無し。私の好きな言葉です。

 見た見た!! 動きがオーガそのものでめっちゃキモ……じゃなくてカッコよかった!!


 125:名無し。私の好きな言葉です。

 切り抜き動画も出ているぞ。

 ○○◯.com/△△△△△△△△

 コメントが「完全にクリーチャー」「もはや人間要素はガワだけ」てな感じで溢れてて、青汁噴き出そうになった。どうしてくれる。


 126:名無し。私の好きな言葉です。

 何故に青汁。

 

 127:名無し。私の好きな言葉です。

 しかもまぁ、そう言われても仕方がない。

 こんな変態機動するハンターなんて未だいないし、しかも爪で泣き別れとか完全にバケモンですわ。


 128:名無し。私の好きな言葉です。

 狂拳先輩って化け物だ化け物だって今まで言われてたんだけど、これで名実ともに化け物になったな。


 129:名無し。私の好きな言葉です。

 先輩に対してそんな事を言うんじゃない!! ただ単に虐殺が好きなだけの狂人の中の狂人なんだ!!


 130:名無し。私の好きな言葉です。

 反論しているつもりが全然反論してなくて草。


 131:名無し。私の好きな言葉です。

 そもそもスペシャルスキルって何だよ? 公式とかでそんなの見た事ないぞ。


 132:名無し。私の好きな言葉です。

 隠しスキルってやつかもしれん。どうみてもユニークスキルより強力みたいだし。


 133:名無し。私の好きな言葉です。

 ???「誰か説明してくれよ!!」


 134:名無し。私の好きな言葉です。

 運営にその事を電話しているんだけど、全然繋がらないわ。

 間違いなく、スペシャルスキルの事で電話殺到してるなこりゃ。


 135:名無し。私の好きな言葉です。

 公表まで待つしかないか……。


 136:名無し。私の好きな言葉です。

 それよりも俺、気になる事があんだけどさぁ……。

 狂拳先輩が目をつぶりながらオーガを蹴り飛ばしたんだけど、あれがまるで大黒おおぐろみたいだって思えてきて……。


 137:名無し。私の好きな言葉です。

 誰、大黒って?


 138:名無し。私の好きな言葉です。

 大黒総山おおぐろそうざん。数十年前に大活躍した伝説の若手空手家。

 日本中の腕の立つ空手家はもちろんの事、世界中の強者を倒していったというモノホンの英雄。空手に詳しい人なら知っていると思うけど。


 139:名無し。私の好きな言葉です。

 ああ、何か聞いた事あるな。

 急に表舞台から姿を消して、それ以来行方知れずとか何とか。


 140:名無し。私の好きな言葉です。

 大黒は目をつぶったまま、向かって来る組手相手に反撃するのを得意としていたんだ。いわゆる心眼ってやつ。

 狂拳先輩のその動きが、どうも大黒そっくりで……。さすがにないとは思うけど、もし弟子とかだったら……。


 141:名無し。私の好きな言葉です。

 ……今まで見せた戦闘能力のアレコレが証明出来るな。


 142:名無し。私の好きな言葉です。

 もっともあくまで推測だし、狂拳先輩に問いただせても良い返事もらえないと思うがな。

 1つ言えるのはそれが本当であっても嘘であっても、狂拳先輩が伝説の空手家に匹敵するって事だ。


 143:名無し。私の好きな言葉です。

 何かアレだな……これで嫉妬とかで狂拳先輩に迫ってきたら「コイツ死んだな」って同情するわ。


 144:名無し。私の好きな言葉です。

 ハハハハ、そんなバカは出てこんだろう。……出ないよね?




「やはり薄々感づいている人がいるな。さすがにその先まで踏み込まないとは思うのだが」


 かつての朱音の恩師――川北剣八郎が、スマホの掲示板を見ながら独り言ちていた。


 掲示板に出てきた「大黒総山」は彼の空手家としての名前であり、言わば芸名である。

 川北は数十年前では英雄と呼ばれるほどの活躍をしていたのだが、ふとある日を境に空手界隈から身を引き、教師になる事を選んだのだ。

 

 身を引いた理由は、自分の限界を感じたから。


 これ以上強くなっても得にならない。ならば自分の強さを次の世代に教えよう。

 そう思った彼は教師への転身をし、今に至るのである。


 ちなみに空手教室の先生ではなく学校の教師になったのは、自分の事を知る人間が来るのを防ぐ為でもある。

 自分の強さを受け継ぐのは何も知らない生徒がいいだろうという、あえての選択なのだ。


「にしても辻森の奴、俺がだいぶ前に教えた心眼を発揮するとはなぁ。やっぱりアイツは、そういう星の下で生まれているよ」


 朱音に心眼を教えたのは、単なる気まぐれだった。

 もし習得出来なくてもマッチしなかっただけと諦めるつもりだったのだが、朱音はそんな川北の考えに反しメキメキと我が物にしたのである。


 掲示板のコメントの言葉を借りるなら、まさに辻森朱音という人間は「化け物」と言ってもいい。

 そしてそれを鼻にかけないどころか、自分の楽しみの為に使うというある意味純粋な存在でもある。


「スペシャルスキルとやらはよく分からないが、間違いなく今の辻森は最強に違いないな。果たしてアイツに、どんな結末がやって来るのやら」


 最強の果てにあるのは、神か、悪魔か。

 そんな事を川北は思いながら、パソコンに映るかつての弟子……もといアカネを見た。


「……にしても」


『はわーん幸せ~。もう食べただけでハッピーになれる~』


「はあう~! エリちゃんの幸せそうな笑顔、脳が蕩けるぅ~! なにこの可愛い生き物! こんな子が埋もれてたなんて、ヨーツベ運営の頭おかしいんじゃね!? クレームでも入れたろか!?」


「…………何言ってんのアンタ?」


「うわっ!? お前か!? 急に部屋の中に入るなよ!?」


「何度もノックしたんだけど。それよりもまた配信なんか見て、良い歳して恥ずかしくないのかい?」


「や、やかましいな! 配信は仕事で疲れた体を癒すオアシスなんだぞ!? 何ならお前も見るか!?」


「『はあう~』とか言う夫と一緒に見たいと思わんが。それよりもさっき頼んだ買い物、そろそろ行かないとマズいんじゃないの?」


「マジか!? うわぁ悪い!! 後でベロチューするから許してくれ!!」


「良い歳してベロチューとか言うな!! キメェったらありゃしないよ!!」


 この通り、伝説の空手家と言われた川北剣八郎という男は。

 恐妻家であり愛妻家でもあり、そして可愛い女の子にハァハァしたり妻にキスを迫ったりする変態でもあった。


 ―――――――――――――――――――――――――――――――――


 ここまでお読みいただきありがとうございます! 第3章はこれにて完結です!

 続いての人物紹介はエリちゃんとなりますので、ぜひともご覧になって下さればかと思います!


「面白い」「続きが気になる」と思った方は、ぜひとも☆や応援コメやレビューよろしくお願いします!

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