第22話 拠点でのレッドファイッ!!

 拠点の外辺りにいたハンターが、全ての始まりだった。


 彼が木箱に寄っかかりながら寝ていたところ、突然地震のような揺れが襲ってきたのだ。

 不審に思った彼が何事かと目を覚ました瞬間、驚きから悲鳴を上げてしまう。


「うわああああああああああ!!!」


 目の前の草原を覆い尽くす、無数の巨大な黒い影。

 その正体は、奥の森に生息する上級クリーチャー――オークの群れだったのである!


「オークだぁ!! オークの群れが来たぁ!!」


 いっぱしのハンターである彼でさえ、そう叫びながら逃げ惑うしかなかった。

 

 オークがこれだけの群れを形成するのは前代未聞。

 しかも、それが拠点に向かって来るというのだから無理もない。


 悲鳴を皮切りに一部のハンターがパニックに陥るが、中には勇敢な者が多数存在していた。

 

「何が起こったのか知らんが、倒しまくるしかないな!!」


「コイツは俺の獲物だ、手を出すな!!」


「へっ、オークなど俺の武器の錆にしてらぁ!!」


 オークの素材を入手しようとする者、この騒ぎに祭り感覚で参加する者、自分の実力を証明したい者。

 そうしたハンター達が、突如現れたオークの群れに立ち向かっていくのだが、


 ――ブオオオオオオオオ!!


「ギャアアアアアアアア!!」


「ゴワアアっ!!」


「この野郎が……アガアアアッ!!」


 仮にもオークは上級クリーチャー。

 そしてそれが群れを為しているせいで、ハンター達が成す術もなく潰されていってしまう。


 もはや劣勢。

 このままオークの群れによって拠点が蹂躙されると思われた……その時、


「ダラアアアアアアアアアア!!」


 ――ブゴオオオオオ!!


 その内の1体がとあるハンターの拳を喰らい、血反吐を撒き散らしながら倒れ込んだ。

 

 消滅していくオークを見下ろすハンターの名は、アカネ。

 誰もが知っている《紅蓮の狂拳》であり、《クリワイ》最大の狂人なのである。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「急に騒がしくなったから来てみたら、こんな事が起こってたんだ。何でだと思うコユミ?」


「分かりませんが、とにかく異常事態というのは誰の目から見ても明らかと!」


 情報屋を置いて現場に駆け付けた私達が目撃したのは、草原を覆い尽くすオークの群れだった。

 

 既にハンターが交戦してやられてしまったのか、その装備やアイテムなどが色々転がっている。

 これだけの群れが襲いかかってきたのだから、さもありなんといったところか。


〈ファー!!! オークがいっぱいいやがるぅ!!〉

〈何でこんなに!? オークが群れで迫ってくる事あっけ!?〉

〈今までなかったぞんなもん!! これヤベェだろさすがに!!〉

〈非常事態発生!! 非常事態発生!!〉


「おおお、同接が25万に! ……って、それどころじゃなかった! とにかく二手に分かれて殲滅するしか他ないです!!」


「分かった。気を付けなよ」


「はい! 《白牙狼の眷属》!!」 


 コユミが眷属を2体生み出した後、オークの群れへとけしかけた。

 

 眷属がオークにまとわりついて喉笛を掻っ切ったりする中、コユミがフェンリルケインからの氷柱で仕留めていく。

 彼女の様子をしばらく見ていた私だったが、そこにオーク達が迫って来ている事につい失念していた。


「さて、私もやりますかっと」


 ――ブオオオオオオオン!!


「まずはお前から死ね!!」


 ――ガアゴオオオ!!?


 最初に迫ってきた奴の顔面を殴り潰す!!


 続いて2体目には回し蹴り、3体目には正拳突き、4体目には前蹴り、そして5体目には!!


 

 ボキッ!! バキッ!!! ゴギャ!! ドガアア!!



 ――ブギャアアアアアアア!!


 ――グギェアア!!


 ――ブアアア!!!?


 私が奏でる骨を折る音と共に、オークの痛々しい悲鳴と生暖かい血しぶきが顔面から湧き起こる。

 そうして私の後ろに築かれていく死体の数々……くうう快感!! めっちゃ最高だわ!!


「み、見ろよ!! 狂拳のあの戦い……!!」


「武器なしで戦うって話は本当だったのか……!」


「もはや戦闘じゃねぇ……一方的な虐殺だ……」


「わ、笑ってやがる……やっぱり異名通り狂ってやがるぜ!!」


〈ハンター達がめっちゃ怯えてるんですがww〉

〈いや、初見の俺でも怖えと思うよ……完全に殺戮やんけ……〉

〈まぁ、最初はそう思うわな。でも見ている内に快感になってくるんだよコレが〉

〈狂拳先輩、頑張ってー♡♡!!〉


「ほらよ!!」


 15体目の喉元に手を突っ込んでから、舌を一気に引き抜いた。

 そのオークが声にならない悲鳴を上げながらのたうち回っていたので、トドメとして顔面を踏み潰す!!


 ――ガアアア!!


 ソイツが消滅した後に辺りを見渡すと、群れが残り5体程度になっている事が分かった。

 確か30体くらいはいたはずなのに……私、結構数を減らしてたんだ。


「まぁ、とっとと終わらせてコユミのところに……」


 ――ブグオオオオオオオオオオオオンン!!!


「ん?」


〈何だ?〉

〈オークの鳴き声にしては野太いような……?〉


 今の咆哮……森からか?


 私がそこを覗いてみた瞬間、追加とばかりに大勢のオークが押し寄せてくる。

 それだけでも驚きなのだが……、


 ――ブオオオオオ!!? ブアアアアアア!!!


 森から巨大な腕が伸びてきて、1体のオークを引きずり込んでしまったのだ。

 

〈……えっ?〉

〈何……だと……?〉


 何が起こったのか分からなかった私を尻目に、樹木が急に押し倒されていく。


 まず見えてきたのは、オークを捕まえた巨大な腕。

 未だ生きているオークがもがいていたものの、それは次に見えてきた口に運ばれがぶりつかれる。


「……でか」

 

 オークをがぶりついたのは、他でもなく同じオーク。

 ただ他の奴らと違い、明らかに3倍以上の巨体を持っていたのだ。


 ――ブルウウウウ……ブグオオオオオオオオオオオオンン!!!

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