第3話 レッドファイッ!!(赤髪だけに)
この《クリーチャーズ・オブ・ワイルド》。武器でクリーチャーを倒す動画しか見てないから、徒手空拳で倒せるのか疑問があった。
もしかしたらそういう戦えるスタイルがあるのかもしれないが、まさかここまで強力だったとは我ながら驚いてしまう。
もしかして、私にはそういう素質があったりしたのだろうか。
いやそれよりも、これはまさしくチャンスではないだろうか?
「昔っから、こういう殴ったりするのやってみたかったんだよねぇ……」
私は思わず口角を上げていた。
実は私、C〇RO:DかZくらいの残虐プレイゲームがチョー好きなのだ。
血しぶきブシャーとか人を倫理観ガン無視で殺せるやつ。
もちろん、殴りたいなんて現実で言ったら犯罪予備軍認定ものだ。
空手だってそういうのは禁じられている。
ただここはVR世界の中。そんな倫理的な心配は無用だし、遠慮なくガチれる。
そう考えるとワクワクするではないか!!
――ガアアアアアア!!
呆気に取られていた2体のダークリザードだったが、ふと我に返ったように私の方へと向かって来た。
もちろん私は迎え撃つ。暴力でだ!
「死にたいならお望みにしてやるよぉ!!」
まず、真正面からの個体は地面に叩き込むように殴り付ける!
それによってダークリザードの頭部が陥没し、地面が隆起するほど割れる!
割れる地面の感触、殴り付けた際のダークリザードのぬめっとした感触。
どれもこれも本物みたいで殴った感が凄まじい。
これだよこれ! こういうバトルがお望みだったんだ!!
「と、入り浸っているのもいい……が!!」
――グオオオオオ!!
背後から別の個体が迫ってくるのは、とっくに気付いている。
私はカウンターのつもりで回し蹴りをし、そのダークリザードの頭部にクリーンヒットさせる!
――アガッ!!
ボキッ!! と明らかに骨が折れたような感触をしながら、地面に転がっていくダークリザード。
そのまま動かなくなって……うわっ、骨が折れた程度で死んだの? 貧弱すぎでしょ?
人間には215本の骨があんだからさ、クリーチャーなら1本折れた程度で死なないでほしいな。
――……グオオオオアアア!!
そう思った途端、地面に陥没していたダークリザードが動き出した。
すかさず足で首元を踏み付けたものの、執念深いのか鋭い先端の尻尾を差し向けてくる。
一応、反射神経が強い私は手掴みでキャッチし、
「《クリワイ》、思ったよりリアルに作られているみたいだし、ちょい試してもらうか……なぁ!!」
それを一気に引っこ抜く!!
ブチブチブチィ……!!!
――ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!
「黒い血がドバドバ出んじゃん! しかもちょっと匂うしめっちゃリアル!!」
どうやら《クリワイ》には、クリーチャーの欠損や流血モーションが用意されているらしい。
一応C〇RO:Zとは書かれていたが、まさかここまで忠実にされているとは。
「じゃあ次は……」
ブチイイイイ!!
――オ゛オオオオオオオオオオンン!!?
続いてダークリザードの右腕を引っこ抜けば、実に良い悲鳴を上げてくれる。
気を良くした私は、さらに左腕も一気に!
ボキボキボキッ!!
――グアアアアアアアアアアアア!!
おっと、勢い余って骨を砕いてしまったらしい。
まぁ、どうせゲームなんだから気にしない気にしない。
――ガアア……! ギュアアア……!! アガアア……!
両腕と尻尾を引き抜かれた故か、ダークリザードの鳴き声が息絶え絶えだ。
抵抗の意か首を振り続けているので、これには私でも不憫に思って……、
ブチイイイインン!!
――ギュアギアアグアアアアアアアア!!
嘘である。
喧嘩売ってきたのはそっちなので、介錯も兼ねて首を引っこ抜いてやった。
頭部や前脚を失った身体は完全に動かなくなり、溶けていくように消滅する。
私はそれを見下ろした後、無意識に身体を震わせていた。
「フフフ……アハハハハハハハハハ!! 最高じゃんコレ!! こういうのを待っていたんだよ!! マジ最高!!」
現実では出来ないだろう残虐プレイ!! 実際にやると爽快じゃないか!!
しかもここはVR世界の中、ドン引きされるのはあれど倫理観を問われる事はない!!
まさしく私の理想の世界だ!!
……と興奮するのもいいが、どうもダークリザード達が消滅した場所に素材がドロップされているらしい。
・《
『スベスベとしていながらも強度があるダークリザードの皮。防具の素材に使用出来る』
・《暗竜子の鉤爪》
『ダークリザードの鋭く湾曲した爪。武器の素材の他、薬の強化材料にも使用出来る』
・《暗竜子の
『ダークリザードの時々鼓動する肝。薬にすれば素早さが上がる』
もちろん今後の為になるので、それらを全部回収。
こういう敵を倒しての素材回収、割と好きなんだよね。
「ハァ面白かった。満足した事だし、そろそろログアウトするか」
とにかく今日はこの辺にしておこう。
そろそろご飯やら風呂やらしないといかんし、明日には学校があるしね。
オートセーブなのでそのままログアウトすると、視界が現実の……要は我が部屋を映したものへと変わる。
軽く背伸びしてから1階を降りようとしたところ、ふとスマホから着信音が鳴り始めた。
〈姉さん:おーい、《クリワイ》どうだった? 楽しんでる?〉
喜奈姉さんからのラインだ。
実にウザいが、一応返信をする事にした。
〈朱音:まぁ楽しめたよ。何故か武器が掴めなくなったから、素手でやる事になったけど〉
〈姉さん:はっ?〉
〈朱音:あとクリーチャーを殴ったら気持ちよかったから、そのまま両腕とか引き抜いた〉
〈姉さん:はっ?? 何言ってんの?? いきなりサイコパス??〉
〈朱音:サイコパス言うな。じゃあ私はこれで〉
「……てかそうだ。運営に電話しないと」
オートスキャンにモザイクが掛かったり装備が掴めなくなったりしたの、恐らくバグか何かだろう。
正直気乗りしないものの、私は運営に連絡してその趣旨を伝えた。
『了解しました! それではこちらで調べておきますので、少々お時間を下さい!』
「はい、お願いします」
『それでは、今後とも《クリーチャーズ・オブ・ワイルド》をお楽しみ下さいませ!』
女性スタッフさんが言うには、そうすぐにはバグの原因を解明出来る訳ではなく、時間が必要なんだとか。
とりあえずバグはあちらに任せるとして、私はご飯と風呂を済ませてから明日に向けて寝る事にした。
……それにしてもダークリザードとの戦闘時、違和感があったな。
まるで誰かに見られたような感じだったような……まぁ別にいいか。
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