Chapter3 少年は自分の力の意味を見つめ直す

Chapter 3-1 目が覚めたらそこは

 ぼんやりとした視界のなか、きらめの前に立っていたのは天使・セラフィエルだった。


 彼は寂しげな表情を浮かべながら、手にした光の剣を振りかぶる。


 そのまま振り下ろされた剣が、きらめの身体を切り裂く、その寸前で。


 目が、覚めた。


     ※     ※     ※


 ひどい寝汗だった。服が肌に張り付いて気分が悪い。無理やりにでも引っぺがしてしまいたいくらいだった。

 辺りを見回す。そこは見覚えがある……というより、昨日見たばかりの場所だった。


「螺旋の……環……?」


 ということは、昨日の街まできらめを運び込んでくれたのだろうか。途中、アリッサというリーゼの姿をした魔族を見てからの記憶がおぼろげだが、自分はまた無茶をして倒れたのか。


 きらめは再びベッドに倒れ込む。頭が痛い。身体がだるい。リーゼは無事なのだろうか。


 ふと、きらめの指輪が光る。赤い光。光のなかから現れたのはドラだった。


「きらめ!」

「ドラ……」

「きらめ……!」

「……ドラ……?」


 また無茶をして、などとどやされるものだとばかり思っていたきらめは、泣きながら抱き着いてきたドラに面食らってしまった。

 ええと、どうしよう。と、取り敢えず謝る? え? 何を? え? え??

 内心あたふたしている内に、控えめなノックの音がして、ドアが開く。


「失礼しまー……。あ、おはー。起きたー?」


 入ってきたのはメイド服を着たかなただった。彼女はきらめが起きているのを見て声をかけてきたが、そこに抱き着くドラに視線を移すと、


「あ、お邪魔しましたー」


 そのまま後ろ足で出て行こうとしてしまう。


「ま、待って。大丈夫です」


 きらめは上体を起こし、ドラを抱きかかえる。離れようとしてくれないため、そのままでいることにした。


「ええー? もうちょっとこう、ゆっくりがっぽりしっぽりやっててもらってもいいよー?」


 なにをだろうか。


「それより、ゲンさんやリーゼさんは? いらっしゃらないんですか?」

「いや、俺ならここにいる」


 そう言って顔を出したのは、ゲンだった。サングラス越しでもわかる厳しい視線は、果たしてなにを意味しているのか。


「ゲンさん! よかった、無事でしたか! リーゼさんは?」

「……リーゼはいない」


「……え?」


「……ふぅーっ。まずは、話しておこう。君が倒れてからなにがあったのかを、な」

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