Chapter 2-12 僕が『千年大樹の巫女』様……ですか?
きらめはベーコンエッグマフィンを口に運ぼうとして、手を止めた。
そのままウリボーと顔を見合わせ、
「そうなの?」
「ぷぎゅ?」
首を傾げ合うのであった。
さかのぼって状況を説明する。宿屋『螺旋の環』の食堂には、朝食がすでに用意されていた。先にテーブルに着いていたリーゼに招かれて席に着くと、そこにもう一人の宿泊客がやってきた。サングラスをかけたその人物は、広場できらめをおぶってくれた男性であった。
「あ、ゲンさん。おはよう」
「ああ。おはよう、リーゼ。それに嬢ちゃんも」
「おはようございます。えっと、ゲンさん、ですか?」
「それで構わんよ」
「ありがとうございます、ゲンさん。僕はきらめです。よろしくお願いします」
「ああ。改めて、ゲンと言う者だ。よろしく頼む、きらめ」
きらめとゲンが自己紹介を終えると、リーゼがややジトッとした目でゲンを見つめる。
「それにしても、ゲンさんときらめはあのときが初対面だったのね」
知り合いなのかと思って話に付き合ってあげたら、というリーゼに、ゲンは大きく息を吐いて謝罪を返す。
「ふぅーっ。悪いな。俺は俺でちょっとやりたいことがあってね」
「やりたいこと?」
「ああ。探し物、と言ったところだな」
ゲンは、顔をきらめに向けた。サングラス越しのゲンの眼差しが、鋭くなったような気がした。
「昨日の働き、見事だったな『千年大樹の巫女』。流石だ」
「へ?」
そうして、きらめは始めようとした食事を止めて、小首を傾げることになったのだった。
「キラメ。私はあなたのような力を持っている人を初めて見たわ。きっとあなたが、『千年大樹の巫女』様なのよ」
きらめの対面に座る二人の大人は、きらめを真っすぐに見つめていた。
「そう、なんでしょうか……」
確かに、そう考えればしっくりくるものはある。どれだけ探しても見つからないどころか、手がかりもない。『千年大樹の巫女』がきらめ自身ならば当然なのだ。もしかしたら、心のどこかで薄々そう思っていたのかもしれない。
「では、仕方ありませんね。……僕が魔族を浄化できるようになるしかない、か」
きらめはそう、割り切った言葉を発したが、明らかに困ったような表情を浮かべていた。
「ふぅーっ。どういうことか、説明してくれるか?」
それを見かねてか尋ねてきたゲンに、まずは魔族について説明をする。
「それで、君はその魔族に会ったことがある、と」
「ええ。リーゼさんには言いましたよね? できれば浄化してあげたいって」
「それは、つまり」
きらめは両手を握り、伏し目がちになって唇を噛んだ。
「はい。――僕には魔族を倒すことはできても、浄化することはできませんでした」
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