Chapter 2-7 町中に瘴気が広がっていきます
それは、燃え広がる炎のように。
あるいは、うねりを上げる波のように。
突如として爆発的に広がり始めた瘴気。
きらめの耳に響く音は、その大きさと範囲を瞬く間に広げていく。音にはもう、きらめを守る加護が正常に機能していることを確認できる以上の意味はない。溢れかえる黒いオーラが海のように町を沈めていく。
夜の闇の中で、町はこの世の地獄と化しつつあった。
きらめは、もだえ苦しむゼロ段階の人々を浄化して回るが、それをはるかに上回るスピードで瘴気に呑まれる人が増えていく。
「こうなったら……!」
「キラメ! どこに行くの!?」
きらめの後ろを追ってくるリーゼは、瘴気に侵された人々が、きらめのイクスに触れると元に戻るのを不思議に思いつつも、駆け出そうとするきらめを案じる声を発する。
「時計台です! あの高さからなら……!!」
「……時計台ね。いいわ。私も行きましょう」
「いえ、リーゼさんはどこか安全なところ……は、ないか」
きらめはきょろきょろと辺りを見回すが、この状況で安全を確保できるところなど存在しないだろう。
「……じゃあ、はぐれないようにお願いします! 行くよ、ウリボー!」
「ぷぎゅっ!!」
きらめはウリボーを伴い、リーゼを後ろに時計台へ向かって走り出した。
「それで、キラメ! 時計台に行ってどうするの?」
「切り札を使います! 大丈夫です、瘴気は全部浄化してみせます!」
「浄化……。キラメ、あなたは一体――」
リーゼの問いが、それ以上言葉になる前に。
「巫女、さま……」
わき道から、瘴気に侵された子供がよたよたと歩み出てきた。転びそうになったその子を、リーゼは反射的に抱き止める。
「大丈夫!?」
「――ダメです、リーゼさん! その子は!!」
「えっ――」
子供は、喜々として大きな口を広げ、リーゼに噛み付かんとしてきた。
それを遮ったのは、きらめが放った光の矢だ。矢は子供から漏れ出る瘴気を穿ち、浄化する。
「そんな……!」
「第一段階……!」
口元をおさえて目を見開くリーゼの前に、きらめは背に庇うように立つ。
瘴気の侵食が進み、暴走を始めた『魔物』と化した子供たちが、きらめたち三人を取り囲んでいた。
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