Chapter 2-8 戦いになります
「リーゼさん、合図したらジャンプしてください」
「え、ええ」
肩越しにリーゼが頷くのを確認しつつ、きらめは左手の指輪を一つ、右手の指に付け替えた。黄色に光る宝石が埋め込まれた指輪である。
「ウリボーも!」
「ぷぎゅぎゅっ!」
ウリボーが勇んで返事をすると同時に、子供たちが牙を剥いた。
襲い来る彼らを前に、しかしきらめに臆した様子は見られない。
「行くよ、ノン」
<了解なんだなー>
黄色の指輪に口付けすると、のんびりとした声とともに指輪が光り出す。
「今です!」
きらめの合図で二人が跳躍する。その最中にきらめが右手を前にかざすと、わずかな間ではあるが地面が大きく揺れる。
これに子供たちが体勢を崩すなか、リーゼとウリボーが着地。このときには既に揺れは収まっていた。ウリボーは着地の反動で飛び跳ねながら、それを推進力にして子供たちへと突進をしかける。
「リーゼさん、そのまま伏せて!」
正面から向かってくる魔物はウリボーに任せ、きらめは左右両側から襲い来る魔物たちを対処する。彼の両手には弓ではなく、クロスボウが携えられていた。これに五本ずつ、計十本のイクスの矢が番えられており、きらめはそれを左右同時に撃ち出す。
矢はきらめのイクスで作られているものだ。故に再装填は即座に行われる。再び右に五本を装填し、発射。踊るように反転しつつ、左に五本を番えて射出。これを繰り返し、魔物はほんのわずかの間に浄化されていく。
「ウリボー!」
きらめが声をかけると、ウリボーはクロスボウの射線上から離脱する。それを見計らって放った矢が、残りの魔物たちを浄化する。
「すごい……!」
その光景を目の当たりにしたリーゼは、思わずと言った様子で声をもらした。
そんな彼女を振り返り、きらめは手を差し出す。その手からクロスボウはいつの間にか消えている。
「よし! リーゼさん、行きましょう!」
「えっ!? え、ええ!」
惚けていたせいか、リーゼはおっかなびっくりにきらめの手を取る。そのまま手を引くきらめの、小柄な身体からは想像もつかないような力強さに驚きながら、リーゼは立ち上がる。
再び時計台へ向かって走りだそうとしたきらめたちだったが、案の定と言うべきか、そこに新たな魔物が現れた。
膨れ上がった、大の大人を優に超える体躯。それをすっぽりと覆い隠す、まるでローブのように変形した瘴気の間から、虚ろな表情の子供の顔が覗く。
「あれは……!」
「ええ、第二段階です。リーゼさん、浄化した子たちを逃がしてやってもらえませんか?」
「でも、キラメは……!!」
「大丈夫ですよ」
きらめは弓を手にし、リーゼを肩越しに振り返る。
「僕は負けません」
そしてきらめは、そのまま第二段階の魔物へ向かって一直線に駆けだした。
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