Chapter 2-14 魔法少女、らしいです
朝食を終えてロビーへ戻ると、カウンターではウリボーとあの中性的な子がたわむれていた。
きらめは彼らの元に歩み寄ると、ぺこりと頭を下げる。
「ごちそうさまでした! おいしかったです」
「お粗末さまー。気に入ってもらえたなら、よかったかな」
と、感情の起伏に乏しかった表情に、かすかに笑みが浮かぶ。
それを見て、きらめもなんとなく嬉しくなる。
「さ、行くよウリボー。そろそろ出る準備をしなくちゃ」
「あら。もう行くんだ」
「ええ。お客さんでもないのに泊まらせてもらって、食事までいただいて、これ以上お邪魔できませんから」
昨夜倒れたきらめは、リーゼの計らいでベッドに寝かせてもらっていただけだ。正式にチェックインはしていない。少なくとも、きらめの中では彼はまだこの宿の客とは言い難かった。
「気にしなくていいよー。それに、っと」
その子は、ガサゴソとカウンターの下から、なにやらタブレット端末のようなものを引っ張り出す。あんまり見せちゃいけないんだけどー、などと呟いているが、抑揚が少ないせいかまったく悪びれているようには聞こえない。
きらめはこの世界に似つかわしくない物体の登場に、唖然とするばかりだった。
「実は、君がいつかウチに来るってことはねー。君がこの世界に転生したときから分かってたりー」
「………………え?」
イマ、ナントオッシャイマシタ?
呆然とするきらめに、その子はタブレットを操作して画面を見せてくる。そこには『七星きらめ』の名前が、きらめの筆跡で確かに記入されていた。
「ここはね、魔術的なあれがあれしてる空間なんでー。泊まれる人が決まってたりするんだよねー。で、そういう人は最初っからこれに名前が載ってるって訳」
分かるような分からないような。
その子の説明に、明らかに付いて行けていないきらめは、とりあえず最初に浮かんだ疑問を口にする。
「あの……。あなたは一体……」
「あたし? あたしは神埼かなた。ここの店番でー、魔法少女でー」
最後に、かなたと名乗ったその子は衝撃的な一言を口にする。
「君が前にいた世界から来た、って言えば分かるかな?」
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