Chapter 1-10 猪さんを浄化します
――バチバチバチバチッ!!
静電気が弾けるような音だったそれは、もはや電流がスパークするかのような激しい音に変わっていた。
これはもしや、あの巨猪の発しているものなのか。彼奴が現れたと同時に苛烈さを増した音の正体を、きらめはそう推測する。
なんにせよ、今は音の正体・原因を探っている場合ではない。相対した巨猪を前に、きらめに何ができるのか。
分からないままに、きらめは弓を構えようとする。
と、その瞬間だ。突如として音が消えた。
「――間に合ったね」
何が起こったのかと思う間もなく、そんな声が届いた。
「あなた、は」
「やあ、久し振りだね、きらめ。ごめんごめん、大事なことを言い忘れていたよ」
声のした方を振り仰ぐ。そこにはきらめが転生する前に最後に会った天使、セラフィエルの姿があった。
「ごめんなさい、今は!」
「ん? ああ、大丈夫だよ。ほら、見てごらん」
セラフィエルに促されるまま、巨猪を見やる。
「とは言え、あまり時間もない。手短に話すよ。君はこの世界に蔓延する瘴気について知っているね? 君には先ほどから、なにかを弾くような音が聞こえていると思う。それは君の身体が持つ加護によるものだ。君はその加護の力により、常に瘴気を弾き飛ばし続けている。君に聞こえる音は、君を取り込もうと近付く瘴気を弾いている音なんだよ。
あの巨猪を見てごらん。よく見ると、彼の身体を覆っているオーラのようなものが見えるだろう? あれが瘴気だ。君のやるべきことは、その加護の力で、瘴気を浄化することだ。済まないが、私たち天使にこの世界に物理的に干渉することはできない。できるのはこうして君にアドバイスを送ることくらいだ。
おっと、結局話が長くなってしまったね。不安かい? 大丈夫、君ならできるさ。だって、君は――」
時間切れだろうか。最後まで言い切ることなく、セラフィエルの姿が消える。
同時に周囲の世界が動き始める。
「きらめ!!」
「――ッ!!」
ドラの声に、きらめはとっさに側転する。
猛烈な勢いとスピードで、巨猪はきらめの元いた位置を駆け抜けていく。
あれに当たればひとたまりもない。セラフィエルは浄化と言ったが、肝心のやり方を教えてもらっていない。
果たして、どうすればそんなことができるのか。
きらめは、木の上で彼を心配げに見守る妖精たちを振り仰ぐ。
「分かんないけど、やってみるしかないよね!」
弓に矢を番えて、きらめは駆けだした。
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