Chapter 3-4 原作の主人公さんです

「もぐもぐ……うん、そっか……もぐもぐ……あー、なるほどねー……もぐもぐ……」


 会話しながらも、食べる音が止まらない。豪快な食べっぷりと言えばいいのか、行儀が悪いと言えばいいのか。いや、まあ両方なんですけど。


 なんか知らんがきらめとゲンの会話に、ライトは自然に参加していた。しかも食べながらである。果たして何人前なのかという量を、かなたが用意する端からどんどん平らげていく。まるで超なんとか人が出てくる漫画の主人公みたいだ、ときらめは呆然と見つめるばかりだった。


 ちなみにどうやら、ゲンとライトは顔馴染みのようだった。『螺旋の環』(ここ)の空気的に、宿泊客はみんな知り合いなのかもしれない。


「ごちそうさまでした! うん、全然わかんないや! ごめん!」


 何十と言う皿をすべて空にして、ライトは手を合わせる。そして続いた謝罪の言葉に、きらめとゲンはズルッとテーブルからずり落ちそうになった。


「え、ええー……」

「なるほどとか言ってなかったか? 食べながら」

「あれ、そうだっけ……。あはは、ごめんなさい!」

「え、ええー……」

「きらめ、それしか言えなくなってるぞ!」


 もはやゲンがツッコミに回る始末である。というか彼しかツッコミ役がいない。


「まあでも、つまりさ。きらめちゃんのなかになんか悪いやつがいて、力を使うとそいつが出てくるかもしれないってことでしょ?」

「ああ、なるほど、そういうことなんですね! ……そうなんですか?」


 ライトの言葉を受け、きらめはゲンに振った。どこからどうしてそうなったのかもはやわからない。理解りようがない。きらめのイクスが瘴気を浄化できる代わりに、逆に影響を受けやすいという話だったはずなのだが。天才が理論より感覚で理解しちゃう系のやつかな、たぶん。


 そして当のゲンは、そんなもん俺に振るな、と言いたげではあったが、顎に手を当てて何やら考え始めた。


「……それは、この子を見てそう感じたのか?」

「へ? えー……うん、そういうこと、かな?」


 かな? じゃなくてさ。ていうかやっぱり話聞いてなかったじゃん! やっぱり話聞いてなかったじゃん!!


「ま、とにかく!」


 と、突然ライトは真面目な表情になる。


「リーゼさんが大変なんでしょ? じゃ、早く助けに行かないとね」

「ライトさんも来てくれるんですか!?」

「もちろん! ここに泊まってる人たちはみんな仲間みたいなものだしね」


 ライトはすぐに立ち上がり、ゲンに声をかける。


「よし、行こうゲンさん! 魔族、だっけ? なんか強そうだけど、二人ならなんとかなるでしょ」


 それを聞いて、あれ? ときらめは胸中で小首を傾げる。僕は?

 そんな心の声が聞こえたのか、ライトはきらめに笑いかける。


「大丈夫、任せといて! そのイクスのこともあるし、それに女の子にこんな危ないことさせられないよ」

「へ? 僕、男の子ですけど?」


 二人の男性が固まる。少し遠くから「男の娘キタコレ!」という声が聞こえたが、気にしないでおこう。

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