【長編】神様のゴホウび!~超絶病弱純朴男の娘が、最強の身体をもらって異世界に転生する話~【連載中】
椰子カナタ
Chapter1 少年はおとぎの世界へ再誕する
Chapter 1-1 神様に出会いました
死後の世界って本当にあったんだと、周囲を見回しながら深い吐息を漏らす。たった十二歳の若さでこの世を去った少年は、見事なまでに自分の死を受け入れていた。
身体はゆっくりとだが、なんとか動く。幸い、死ぬ前のような息苦しさは感じない。少しずつ身を起こすと、目の前の空間にまばゆい光が発生した。
思わず目を閉じて、光が収まるのを待つ。まぶしくなくなるまで目を閉じていると、老人の声が聞こえてきた。
「目が覚めたようじゃな」
目を開ける。
そこには、長いあごひげを生やした、白いローブの老人の姿があった。
「えっと……神様、ですか?」
「ふぉっふぉっふぉ。ま、だいたいそんな感じのじじいじゃよ」
神様はあごひげを撫でながら、朗らかにそう言った。
きらめはその言葉に、息を吐きながら笑みを見せる。
「どうかしたのかのう?」
「いえ……。僕、本当に死んだんですね。僕、ずっと病気で入院してて、お父さんにもお母さんにも迷惑かけてばっかりだったから。僕が死んで二人が楽になってくれたら、嬉しいです」
神様はあごひげを撫でる手を止めた。
「じゃが、君はご両親からとても大切にされておった。それが理解できないとは言わせんぞ? 君を失ったご両親は今、深く悲しんでおられる。それでも、君は自分が死んで嬉しいと言えるかのう」
「はい。両親よりも先立つことになってしまった申し訳なさとかもありますけど、それでも、それでも……。僕、は……。あれ、なんで……!」
きらめは自分の頬を伝う雫を、何度も拭った。何度も、何度も動かしづらい腕で拭っても、しかしそれは大雨のように止まらない。
「君は、前世でとんでもない大罪を犯した。七星きらめとしての人生は、その罪を祓うために用意されたものなんじゃよ。そのせいで君のご両親にも辛い運命を背負わせてしまったが、彼らもまた、そういう運命を背負わねばならん前世であった者たちじゃ。済まぬな」
ぽん、ときらめの頭に骨張っているものの大きくて暖かい掌が乗せられる。
その大きさと暖かさに、きらめは徐々に落ち着きを取り戻していく。
「そんな……。とんでもありません。僕は……、僕は、二人の子供でいられて幸せでした。ありがとうございます」
最後に涙を拭って、きらめは笑顔を作った。
そんなきらめに、神様も破顔する。
「そうかそうか。よろしい! 辛い人生を送った君には、なにかご褒美をやらねばならんのう。どうじゃ? 望みの力を持たせた身体で、今の記憶を保ったまま好きな世界に生まれ変わってみんか?」
「生まれ変わり……転生ですか!?」
人生の大半をベッドの上で過ごしてきたきらめの趣味は、読書だった。空想の世界を自由に動き回れることに対する憧れは人一倍である。夢にまで見た、と言っても過言ではない。
「ふぉっふぉ。そう、転生じゃ。気に入ってくれたようじゃの」
すっかり元気を取り戻したきらめに、神様も朗らかな調子に戻る。
「世界を選ぶのもいいが、まずは身体かの。そのままでは動きづらいじゃろう」
最もな提案だった。死後の世界であっても、きらめの身体は生前と同等の性質を持っているようで、なかなか彼の思うように動かすのは難しい。
きらめは迷わず、こう答えた。
「では、健康で自由に動ける身体をください!」
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