Chapter 1-2 天使さんは話が長かったです

「『スターライト・ファンタジア』の世界へようこそ!」


 身体をもらい転生する世界も決めていざ、というきらめの前に現れたのは、その背に六対の翼を持つ青年だった。


「と言ってもここはまだその世界への門の中、といったところだけれどね。私はセラフィエル。神に仕える天使だよ。ま、最もそんなことは言わなくても分かってもらえるんじゃないかと思うけれどね。ほら、見た目とかで。


 さて、ここからは私が案内を仰せつかったので、ご一緒させてもらうよ。君が選んだ世界、『スターライト・ファンタジア』は言うまでもないかもしれないけれど、いわゆる剣と魔法の世界だ。この世界に転生すれば君は、以前の世界ではできなかった様々な体験ができるだろう。それこそ剣技を習うのも、魔法を覚えるのもいい。


 いやしかし、君が授かった身体は『健康で自由に動ける身体』だったね。いや、実に素晴らしい。それは君の在り方を示すかのような素晴らしい選択だ。私は称賛しよう。ただ、一言付け加えさせてもらうとすれば、もっと欲張ってもよかったんじゃないかと思うけれどね。力があるに越したことはないから。


 でもどんな力があっても、それを使うのはあくまで持ち主だ。強すぎる力は得てしてその持ち主にも牙を剥くもの。であるからして、君の選択は非常に懸命だったと言える。もったいなかった、とも言えるけれどね。いや、ごめんごめん。これ以上は批判のようになってしまうから止めるとしよう。


 何が言いたいかというとね、これから君の向かう世界で、君にはしっかりと力を付けて、その力の使い方をちゃんと考えてほしいということさ。どんな力であれ、どんな状況であれ、奮われた力は暴力だ。それが後に正当化されるか、暴力として罪となるのかの違いに過ぎない。使い方やその意味を考えるのは持っている者の義務だよ。どうか、それを覚えておいてほしい。


 おっと、どうにも説教臭くなってしまったけれど、そろそろ終わりの時間だよ。あの光の先に、君の待ち望んだ世界がある。君の世界では空想の物語でしかないけれど、この先に広がっているのはまぎれもない現実世界だ。それを忘れず、油断しないようこころがけ……。


 ああ、ごめんごめん。言い忘れていたね」


 きらめの姿は、既にセラフィエルの背後から消えていた。


「その辺りは落とし穴が多いから、気を付けてね」

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