Chapter 2-19 魔族と戦います

「……すぐにここから離れてください」

「でも、キラ――」

「早くッ!!」


 きらめの怒号に、リーゼとドラは二の句が継げなくなる。彼女らに声をかけたのはゲンだ。


「行こう。俺たちは他に生存者がいないか探す。それでいいんだな?」

「はい。済みませんゲンさん。よろしくお願いします」


 ゲンが先導する形で、彼らはこの場を離れていく。気配だけでそれを感じ取りながら、きらめは視線を屋根の上に向け続けていた。


「さあ、邪魔な方々もいなくなりましたし、始めませんこと?」

「――してやる」

「?」


 きらめの呟きに、少女は首を傾げた。


「絶対に浄化してやる。お前たちはこの世界の癌だ」


 きらめの両手に、クロスボウが二門現れる。瞬時に装填されたイクスの矢は合わせて十本。きらめはためらいなくこれを少女に向けて撃ち放つ。


 不意打ち気味の攻撃だったが、少女は苦もなく軽やかにかわしていく。屋根の上で踊るようにステップを踏んでいく。その軌跡を辿らされているかのように、きらめの放った矢が屋根に突き刺さっていく。


「あはははははひはははははっ! それではわたくしには当たりませんわよ?」

「そうですね。じゃあ……」


 きらめは黄色の指輪に口づけする。


「ノン!」


 黄色の光が瞬くと、少女の足元がぐらりと揺らぐ。局所的な振動により、彼女の体勢を崩したのだ。

 ふわりと宙に浮かんでしまった彼女は、そのまま重力に逆らえず地面に落ちてしまう。更に少女を取り囲む檻のように、彼女の周りの地面が隆起する。


「行くよ、ルフェ」


 きらめはクロスボウを重ね合わせる。すると弩弓は淡い光を帯び、これを伸ばすように手を広げると、長弓へと形を変えていく。


 出来上がった長弓にイクスの矢をつがえる。矢は風の渦をまとい、その形をドリルのような形状に変化させる。

 上空へ放った瞬間、矢は幾重にも分裂し、隆起した地面の檻の中へ上から爆撃のように降り注ぐ。


 全ての矢が檻の中を穿ったあと、隆起した地面の柱が倒れ、少女は完全にその下敷きになったのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る