お嬢ちゃんへ
『わしと会うのを楽しみにしていてくれてありがとう。
いじめにも会うこともあるかもしれないし
嫌なことがたくさんあるかもしれない。
しかし、困難な時ほど、
わしを純粋に思っていたことを思い出してほしい。
純粋さと勤勉さを忘れないでほしい。
それらを忘れなければ、
またわしに会えるだろう。
サンタクロースより』
☆☆☆
「あれ以来サンタさんは来ないなぁ」
当たり前だと思う。
もう13歳。
中学生になった。
小学生高学年になるまで、
何が書いてあるかよくわからない漢字もあったし、
内容も理解できない部分もあったと思う。
もう親が気を利かせてくれたのだとわかってはいる。
「でも感動したんだもん」
ずっとサンタクロースいると思ってきた。
学校でこんなことが話題になるまでは。
「知らないの? 親がやってくれたんだよ」
「そんなはずないもん。
ちゃんとお父さんとお母さん意外にいたんだもん」
「そんなわけあるか。寝ぼけてたんだろ」
「ほら。サンタさんからの手紙だってあるんだもん」
お嬢ちゃんへと書かれた封筒を見せる。
「へへん。そんなの嘘だね。この嘘つき」
「嘘じゃないもん」
「じゃあ、もうそー、ってやつだ」
「違うったら」
こうやって馬鹿にはされた。
その男子たちよりも気が強いので、いじめられたりすることはない。
☆☆☆
自宅に帰ってから、子供ながらに調べものをする。
どうしたら一生サンタクロースに関われるのだろうか。
インターネットで調べて
なり方を模索する。
「サンタクロースの協会があるなんて」
欧米にはサンタクロースの協会があることを知った。
もっと深く掘り下げていく。
これは日本にはない制度なのか。
落胆する。
でもこの教会に入って働くことができるはずだ。
「まずは英語ね」
書けて話せないと意味がない。
「トイックかな」
英検という手もあるが、所詮、日本の制度だ。
どれだけ話せるのか書けるのか証明するのなら
英語圏でも通用する制度を通過することが必要だ。
「よし、参考書も買ったし、試験日を確認してっと」
お年玉をためていたので、参考書代は支払えた。
しかし、受験費用と交通費はどうにも捻出できなそうだ、
参考書を広げ、
試験日をカレンダーに書き込む。
「あとはリスニングも対策してっと」
勉強時間の計算をしながらふと気が付く。
「もしかしたら、学校の勉強もはかどるかもしれない」
期末試験とギリギリかぶる。
もちろん資格勉強脳が数倍も難しい。
立てた時間通りに勉強を器用にこなすことができれば、
学校の英語の成績も上がるかもしれない、
やる気もあるが、
あとは受験費用の捻出をどのようにするかだけだ。
☆☆☆
自宅の広いリビングダイニングに両親がいた。
食事の準備は万端で、あとは食べるだけといった様子だ。
いつもなら自室から降りてくる娘が下りてはこない。
声をかけるべきかどうか母親は悩んでいた。
「そんなに悩むことなのかい?」
「あの子、急に勉強をやるっていって部屋にこもってしまって」
「勉強ならいいんじゃないのか。
将来のために。
遊ばれて不登校になられても困るわけだし」
「まぁそうなのだけれど。夕飯くらい一緒に食べたいわ」
「親のエゴだよ。きちんと朝は起きれるんだろ」
「ええ」
「なら、問題ないんじゃないか」
「のめりこむタイプだから、他のこともしっかりしてもらわないと」
父親はぴんと来ていないらしい
「ほかのことって」
「家事よ。お嫁に行ったときに何もできないと困るでしょ」
「嫁に行かないかもしれないぞ」
「何をふざけたことを言っているんですか。いつか来る未来よ」
「来ないかもしれない……」
「あの子の前に、あなたが親バカを直さないといけないみたいね」
「ははは」
笑ってごまかす父親である。
その後ろからひょこりと顔を出したのは娘だった。
「家事、手伝うから受験料と交通費出してくれない?」
「――いいわよ。とりあえずご飯食べなさい」
「はぁい」
彼女は両親な使い方はうまかった。
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