サンタクロースのお仕事

働きかた

 ☆☆☆

 正直言って、ヨーロッパ各国に行くのとオーストラリアに行くのとでは飛行機の滞在時間がケタ違いだ。オーストラリアから日本では1つの映画が見れるかどうかで着陸態勢に入ってしまうから少しつまらなかったりもする。


 単位は通信制に切り替え申請をして単位はきっちりととっている。

 日本に帰国して両親に出迎えてもらえた。

 両親はみない間に随分と老け込んだようだった。

「これで卒業できるのよね」

「ええ。今回は証書と卒業式に参加するためだもの」

「「卒業おめでとう」」

「ありがとう。きっちりと出て証書を受け取ってこないとね」

 今回は国産のウナギを使ったうな重だった。

(高いお祝いの品ね)

 感謝しながらいただく。骨がなくて本当に国産のウナギはおいしいのだ。


 翌日、学校へと向かった。久々の通学路に久々の学校だ。


 久しぶりに律子と会うことができた。

 アメリカの弁護士として勤めることが決まったようす。

「すごいじゃない。弁護士試験ってすっごく難しいんでしょ?」

「簡単な州もあるからそこから取って働きながら高度な資格を取っていくつもりよ」


「そうなのね。ではまた」

「サムのこと、もう一度ちゃんと考えてもいいんじゃないかしら」

「サムのこと?」

「オーストラリアにいるんでしょ。また会えるじゃない。そしたらもう……一緒に住んじゃえば?」

「まさか!」


 サムとは月に一度ラインを交換している仲に過ぎない。月に交換しない時だってある。

 男性という最強の防犯力というのは魅力的な誘いだけれど、独身寮付きだから会社の人のご厚意で空いている部屋を借りている。もう住居は定まっている。

「もう夢はかなう寸前なのだもの。今は夢をかなえて維持をすることの方が大事だわ」

「色恋はごめんってこと?」

「私は器用じゃないってこと。なんでもできて恋愛も仕事も両立できるならいいけれど。オーストラリアの職場の先輩たちに聞いたのよ。恋と恋愛を両立させるのは難しい。継続させるのはさらに難しいって」

「まぁ、よく言うわよね」

「だからかなってしまえば独身でもいいかなって」

「もう。サムが報われない。佳織のバカ」

「馬鹿って」

 なんてありふれた罵詈雑言だろうか。

「大体サムなんて好きな人がいるって」

「そうだろうね……」

「ところで律子はどうなのよ」

 自分ばかり責められていい気分はしない。

「私はいるわよ。ハズバンド候補」

「へぇー。すごい。彼とはどういった経緯で」

「バーで」

 律子は顔を染めている。

 人の色恋をからかう才媛は色恋もしっかりできる子らしい。


 そうこうしているうちに校長が出てきて長い話をはじめたのだった。

「始業式や修了式では話が短いのに卒業式には長いなんて詐欺みたい」

「きっと愛情をもって見守っていたんじゃない? ウチの卒業生優秀らしいし」


 この学校の生徒は弁護士、検事など頭がいいと成れない職業のものばかり輩出している。こんなに豪華な先輩たちがいるのならもっと偏差値は高くてもいいと思うのだが如何せん反映されることはまだない。


「名前呼ばれるまで苦行だわ」

 まず清水までかなり待つのだ。前半に人が固まりすぎている学年である。

「長いわね」

 やっと呼ばれて壇上に向かう。証書をもらって自分の席に戻る。

 簡単な行為のはずだが、嫌に緊張した。

 無事卒業式は閉式し、自由時間になる。

「律子はこれからアメリカに戻るの?」

「ええ。向こうに就職するわ。できるだけ向こうにいるつもりよ」

「私もなの。お互いに頑張りましょうね」


 語学仲間はそれぞれの国で働いている。

「私も頑張らないとね」

 語学仲間に元気をもらってまた自分の仕事の戻っていくのだ。

「頑張ろう。世界中の子供たちに夢を与える仕事だもの」

 日本の滞在はあと少し。

 好きな日本食を食べ歩き、満足してからまた旅の支度をし始めたのだった。


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