就職準備2

 オーストラリアのイベントは大盛況で終わった。

 笑顔でサンタの格好をした男性にも女性にも寄っていく子供たち。

 手紙やプレゼントをあげていく。そんな簡単なイベントだった。


 ちなみに同僚との会話はすべて英語で繰り広げる。


「サンタクロースのコスチュームに合っていたわよ」

「本当に。前の人よりも似合っていたわ」

「ありがとうございます」

「イヤー、良かったよ。仕事も早くて的確で助かるよ」

「お褒め頂いて光栄です」

「研修としては以上になるが、どうする? 日本に帰るのか?」


「こちらで継続で働くことはできませんか?」

「いいが。学校は大丈夫なのか」

「通信制にすることもできますので大丈夫かと。

 できればこちらでの業務になれていきたいんです。

 パートタイムで雇っていただけないでしょうか」


 慎重に丁寧に聞いてみる。

 一番偉い人は笑っていった。

「そちらが大丈夫ならこちらとしてもありがたいですな」

「ありがとうございます」

 短期の研修が終わり、

 パートタイムとして雇用が雇用が決まった。

 滞在先のホテルで何とかパソコンを起動する。


(Wi-Fi機能がきちんとしている場所でよかった)

 学校の生徒用フォームに送信する。

「通信制にしたいです。送信っと」

「了解しました。ではこちらのフォームから手続きを行ってください」

 

 学校の手続きに要した時間は30分ほどで案外簡単に手続きができた。

 

 翌日に出勤すると同性の女性から誘いを受けた。

「独身寮があるからそちらに来るといい。ホテル住まいより快適だよ」

「本当にありがとうございます」

 至れり尽くせりの対応で本当に感謝しかない。

「独身寮は会社が借りているわ。女性寮はひとり一部屋なのよ」

「はー。待遇がいいですね」

「その代わりにサンタクロースのコスチュームを着る機会があるからあまり体型を変えないようにって言われているの。あなたも気を付けて」

「はい。わかりました」

 正直言ってオーストラリアはふくよかな方も多い。食べる量が日本人の倍ほどもあるのでそれは納得する。

「あの、男性の友人を招くことはダメですよね」

「駄目ね。男性禁止だから」

「あら、連れ込みたい男性がいるの?」

「いないです」

「どんな人なの?」

「きになるわー」

 食堂にいた女性たちが寄ってきてしまう。

 やはりどこの国の女性も恋愛話は好きなのだ。

「もう。そんな人がいるのならホテル暮らしの方がいろいろと都合がいいでしょうに」

「その彼が可哀そうになってきたわ」

「そういう関係ではなくって。本当に友人なんです」

「フーン。相手はそうは思っていないかもしれないのに」



 結局、サムとは月一ペースで連絡を取っている。

「本当か。イヤー見たかったなぁ。なかなか課題が終わらなくってさ」

「本当に大変なのね。うちの会社では夏にサンタさんの催し物をするから余裕が出来たら見に来てね」

「ああ」

 本当に忙しそうだった。

 日本と違い実力主義が染みついた外国では不器用というのはかなりハンデだ。

(サム、優しいからいろんな方向で無理をしてしまうんだろうな)

 この滞在においては1度はあってみたかったけれども、

 なかなか予定が合わないものだ。


 海外在住の男性となれば求められる仕事のレベルが日本とは違うのだろう。


  ☆☆☆ 


 卒業のことを含めて一度帰国する要請が出た。

 会社の上司に報告するとあっさりと許可が出た。


「では、一度卒業の手続きがありますので帰国させてください」

「ああ、きっちりと卒業してまた来るといい」

 職場の同僚たちは本当に気が良くて「お土産楽しみにしているわよ」「プレゼント期待しているからね」などなど声をかけられた。

「ええ。日本の何かを持ってくるわ」


 サムに一度も会えないのは残念に思いつつも荷物を詰めていく。

 段々なじんできたオーストラリアの空港に向かう。

 やはり空港の手続きは緊張して慣れることはなさそうだ。

 

 そして離陸の時の緊張感はなれるものではない。

 機体が安定してからは空の旅を満喫するのだった。


 

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