滞在中

 留学しているとそんな価値観もあるのかといった驚きや

 歴史背景が違うなって思されることもしばしばある。


 まず、シャワーヘッドの位置が高いこと。

 人前では家族の前だろうと爪を切らないこと。


 そんなむこうの人にとっては当たり前のことが、

 日本人には驚くべきことなのだろう。

 本場の映画館にも行ったし、有名なオペラハウスにも行った。

 数日学校で過ごしていると小菅律子が話しかけてきた。

「やぁ。たのしんでいるか?」

「ええ。あなたも楽しそうね。日本より私は外国の方があっているみたい」

 同じ学校であったときにはにこやかな笑顔を受けた。

「お互い頑張りましょう」

 

 驚きはまだまだたくさんありつつ、

 あっという間に3か月たとうとしていた。


 ホストマザーのキャサリンは笑顔で告げてきた。

「ちょっと早いけれど、サンタさんを連れてきたわ」

「本当に?」

「ほら。来たわ」

 車に乗ってきた彼らは初日に言っていたサンタさんだ。

 何故かサムも一緒に来ている。酒はまだ飲めないが、雰囲気を味わっているようだ。

 佳織はサンタクロースに走り寄る。

「写真撮ってください」

「いいとも。あと、いい子にはプレゼントだ。

 本当は真夜中に渡すんじゃが、

 夜はもっと小さい子供たちのためにいそがしいからなぁ」


「ありがとうございます」


 最終日前日に大きなプレゼントをもらった。

 手紙と真珠のついたネックレスだ。

 帰るときにはホストファミリー全員でお見送りに来てくれ、別れをした。

 サムとは大親友になった。

 連絡先も交換してくれて、また会おうと言ってくれた。

 帰りの飛行機は小菅律子と隣同士の席だった。


「これで、トークスキルは爆発的にあがったんじゃないの?」

「本当にね。帰ったら日本語喋れるかしら」

「もう流ちょうに話しているわよ」


「ほかの人に伝わるか不安なの」

「だよね。私も漢字かける気がしないわ」

 座席前に前に刺さっていた貰える広告用紙の裏に漢字を書いて遊ぶ。

 日本人の2人は飛行機内で日本語の練習をするのだった。


 日本の空港では両親が待ってくれていた。

「ただいま」

 2人は声をそろえておかえりと行ってくれた。

 律子も両親と話している。

 軽く手を振り、家族の時間となった。


 その後、寿司を食べながら報告する。

 醤油が本当に手に入らなかったので日本の食事が本当に恋しいのだ。

 空港のテナントには日本食のお店が多く入っていて助かる。


「でね、サンタさんと写真撮ったんだ」


 父親のねぎらいと母親からの叱責が待っている。

「よく戻ったね。おかえりなさい」

「では、希望はかなったでしょう。さっさと結婚なさい」

「はぁ? するわけないでしょ」

「クラスメイトの後藤君って一人身なんですって。今度挨拶に来るって」

「はぁぁ。何やってんの? 勝手に話を進めないで。ってか後藤って誰よ」

「あんたは。周りに興味がなさすぎるわ。

 高校3年の時の同じクラスだったそうじゃない」


「だからぁ。覚えていないってば」

「卒業写真でも見てきなさい」

「見なくてもわかる。ぜったーいに嫌」

「そんなこと言わずに誰でもいいから成人式までにパートナーを紹介しなさい」

「絶対にしません」

「絶対にしてもらいますからね」

 2人の意見は決裂した。

 どうも馬の合わない人物というのは存在する。

 帰る車の中も雰囲気は最悪だった。


 1日爆睡したら次の日には学校だった。


 日本に帰ったら学校の課題でレポートが待っている。

 日本の専門学校へ行くとレポートが出された。

「大問3つを3千字以内でまとめてこい。もちろん英語でな」

 律子とは何かと席が隣になるので話している。

「さすが、英語に特化した学校ね」

「本当に英語しか喋らす気がないようね」

「……ところがそうでもないのよ。1年生で英語を完全マスターして3か国語をマスターさせようとしているのよ」

「ええ」

「英語圏ならフランス語もドイツ語も文法的に似ているからって」

「確かに響きは似ているけれど。どうなのかしら」

「1年の最後にしっかりと希望を聞かれるらしいからしっかり考えた方がいいわよ」

「なんでそんなに詳しいの?」

「従姉妹がこの学校の第1期卒業生なのよ」

「へー」

 いいことを聞いた。

 これからもカリキュラムで分からないことがあったら聞くことにしよう。 


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