感想
授業から2日後ぼちぼち感想が集まったので取りに来てほしいと連絡が入る。
「1 週間の約束で置かせてもらったのだが、そんなに感想が来ているのかな」
さっそく佳織とサリという女性の2人で回収することになった。
サリは栗毛色の明るい髪をした白人の子。
国籍はアメリカだそうだ。
「サリ、いろいろあったけれど一緒に行動するのは初めてよね。よろしくね」
「ええ。よろしくね」
些細な挨拶だが、これができないと異文化交流は始まらない。サリはイントネーションに違和感はあるものの日本語を少し学んでいた時期があるようで挨拶と名詞くらいはわかるようだ。
泊まっている施設から約30分ほどかかる。質問箱は車で持って行ったので今回は佳織が運転手だ。
「どれくらい集まっているかしら」
「こちらの予想を上回るくらいは欲しいわね」
2人は約束した時間に向かう。
「さて、10時に約束だったはず」
職員玄関に向かい、身分を証明するバッチをみせて案内してもらう。
「少々お待ちください。副校長から一言あるようです」
「はい」
「ぜひ、また催し物をやってくださらないでしょうか?」
「今の時期でよろしいのですか?」
「調整ができるのであれば、ハロウィンの時期が皆騒がしくなる時でして」
「クリスマスの時には試験が被りますが、ハロウィンの時期ならば文化祭の時期ですものね」
学校側としてもイベントの時期には盛り上がってほしいようだ。
「ええ」
「上に調整するように申し伝えますので。最終調整は電話になりますが、よろしいでしょうか? 一応本部はオーストラリアにありますので」
「ええ、もちろんです。来年もよろしくお願いいたします」
話がまとまったところで、学校の年間スケジュールを渡される。手書きでここに入れたいと書かれている。
「検討いたしますね。ではまた」
2人はにこやかに任務を終えた。
「お、これは報告しがいがありますわ」
あふれんばかりの紙が納められていた。車で来ていてよかった。
「今日が晴れていてよかったわ。何か重しになるものが必要ね」
「ええ。ノートでふさげるでしょうか」
なんとかA4のノートで蓋ができた。
これで風で飛ばれる心配はなくなりそうだ。
女二人で持ち上げる。一人で作業したら転んでしまいそうだ。
「ゆっくり行きましょう。転んだりすると嫌ですから」
「そうしましょう」
そろりそろりと慎重に移動しつつ、車の方を目指す。
風は多少吹いている。
車の前に来たところでサリに声をかける。
「いったん下ろすわよ」
「はい」
サリは息を合わせて荷物を地面におろしてくれた。
佳織は車の鍵を開けて誘導する。
「後ろに乗せられると思うから開けるわね」
「はい」
後ろの扉を開けてから荷物を入れる。
(今日が雨でなくて本当に良かったわ)
荷物を置き、サリはほっとしている。
「これで本部に戻れるわね」
「はい」
「運転するから本部に帰るとメールしておいてくれる?」
「はい。わかりました」
助手席に乗ったサリはスマホで連絡している。
「完了しました」
「そう。じゃあ発進するからしっかり掴まっていてね」
「はい。安全運転でお願いします」
「はいはい」
交通量がおおくなってきたので安全に気を付けながら本部に戻っていった。
駐車場に車を止めて、本部として借りているホテルに戻った。
「おう。早かったな」
「大変だったわよ。感想を飛ばさないように持ち帰るのは」
「さっそく読んでみよう」
「ええ。私たちもしっかり読む時間なかったのよ」
「なら、さっそく読んでみましょ」
仲間がランチを買ってきてくれるまで感想を読み漁ったのだ。
「面白い感想もあるわよ」
拙い字でたくさんの学びになったという声もあれば、達筆な字でこれはどういうことなのかと質問もあったりする。
「こっちも」
「質問には答えたいからこちら側に置いておいてね」
「はい」
楽しい感想を見ては仲間たちと共有していくのだった。
サンタクロースに憧れて 朝香るか @kouhi-sairin
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