フランス旅行

旅行

 一度、長期旅行に行っているから準備も案外楽だった。

 だけれども今回は時差という大きな関門がある。


「大したことはないといいけれど」

 サムがこちらまで来てくれるようだ。

 そこでサムと合流してから行くことになった。


「いいね。その服」

 外国人だけあって褒め上手だ。

 「うちの学校のことは心配しなくていいわ。友人に助けてもらえることになっているもの」

 律子とそのほか数人にノートを写させてもらうことになっている。

 学校側にも語学研修だといえば嫌な顔はしなった。

「こちらもさ。仲間たちにノートと代筆を頼んでいるからそんなに心配する必要はないさ」

 サムも似たような手段で切り抜けるようだ。

 ちなみに会話は基本的に英語である。

「フフ。サム国外旅行の経験はあるの?」

「いや、初めてだ。ドキドキするな」

「そうね。お土産たくさん買っていかないとね」

「ああ、機内が暗くなったら寝ておかないと時差ぼけするぜ」

「そうなのね。じゃあ、早く寝ないとね」

 寝て体力を温存する。

 寝て、機内食を食べればもうすぐ着陸だ。

「早いわね」

「飛行機の旅なんてこんなものさ」

 暇つぶしに備え付けの海外ドラマを見て時間をつぶす。

「あ、これ見たことあるぜ。この後男が不倫するんだ」

「アッ、ネタバレはしないでよ」

 なんやかんやと時間をつぶしているうちに着陸態勢に入った。

「コレが済めばフランスだぜ」

「頑張って地上に降りよう」

「がんばるのは機長だせ。俺たちは信頼して従うしかない」

「そうね」

 シートベルトを閉めながら祈る。

(何事もなく着陸できますように)

 無事フランスの地に降り立った。


「長かったわ。まだ時間はあるし荷物を置いてから観光に行きましょう」

「ああ。そうしよう」

 宿は空港の近くにとってある。

 これはギリギリまで観光できるようにするためだ。

 シャルルドゴール空港に降り立つ。

 荷物を宿に預けてしまう。

「身軽になるわね」

「これから楽しみだ」

 そこから電車とバスを乗り継いで目的地へと向かう。

 今回は凱旋門へと向かう。

「わぁ。荘厳ね」

「だな」

 たくさん写真を撮って本場のパスタを堪能する。



「まだ時間がありそうね。ルーブル美術館へ行けそうね」

「ああ」

 サムは歩きながらちょっとした雑学を話していく。

「わお。物知りね」

「このために調べたのさ」

「ふふ。ありがとう」 

 サムは物知りで1か所につき1つは解説を入れてくる。

 2人で美術館の展示品を見て回る。

「さぁ、おしゃれなフランスパリに来たんだ。ファッションを見て回ろうぜ」

「ええ」

 沢山のブランド店が軒を連ねる。

 ブランド店を見て歩く時に否応なく目につくものがある。


 パリにも格差は存在する。

 裏路地に行くと服がボロボロになった人もいる。

 酒瓶を片手に飲んでいる人もいる。

(サムに来てもらってよかったわ。女1人だとなんだか犯罪に巻き込まれそうだわ)

「離れるなよ。感染症の件以降治安が悪くなってきているんだ)


(どこの国も大変だな。フランスは戦勝国なんだから優遇制度もあっただろうに)

 国として優秀なのと、

 下々のものが隅々まで潤っているかというとそうでもないらしい。

 やはりヨーロッパは自己責任論が強いのだろう。


(社会制度が整っているのが日本らしいわね。少しだけ日本が好きになった)


 母親のように母国が大好きというわけではないが、

 日本のいいところも認めてあげる必要があるだろう。


「そろそろ1日目終了だ。日が暮れないうちにホテルへ戻るぞ」

「ええ。少し治安が良くないみたいだし」

「ああ。きっと夜になったら酒飲みがさらに増えるだろう。危なくならないうちに帰るのが旅行者としての振る舞いだ」

「そうね」

 通りすがりの道で女の子が泣いていた。

 手をひくものもいないが、サムに止められた。

「スリかも知れない。ほっておけ」

「うん」

 外国では親切さはトラブルの元なのだ。

「ホテルに帰るぞ」

 サムにもう一回言われて目線をそらせた。

「ホテルは二部屋だ。いいな」

「もっちろん。明日は朝7時に集合ね」

「おう」

 佳織はサムの気持ちにこれっぽっちも気が付いていない。

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