旅行2日目と3日目と
旅行2日目はベルサイユ宮殿とエッフェル塔だ。
「この前で写真撮りたいわ」
「ああ」
通行人に頼んでツーショットをとってもらう。
だいぶフランスの速さにもなれてきた。
基本は英語だが、時々フランス語の単語を混ぜてみる。
そのたびに人々は「良いね」「発音がいいね」と言ってくれる。
あとは町々のブランド物を見てまわる。
「この洋服も素敵だわ」
「ああ」
サムはげんなりしていたが、食事に誘うと彼は元気を取り戻した。
「美味しかったよ」
「ええ。後の一日は何をしようかしら」
「博物館へ行こう」
3日目はギリギリまで美術館と博物館と大聖堂を見て回ったのだった。
☆☆☆
4日目、帰る日になった。
空港にきっちりと間に合って、クラスメイトにお土産を買って帰るのだった。
両手に目いっぱいの荷物を抱えて空港に到着した。
「楽しかったぜ」
「ええ。とっても。また行きましょうね」
「今度はまたオーストラリアに来てくれないか」
「ええ。お金をためていくわ」
「……頼むな」
「なぁ、オーストラリア永住しないか?」
「んー。視野には入れているよ。これからもお世話になるときもあるかと思う」
「そうじゃなくってさぁ」
ピンポンパンポーン
『搭乗手続きを開始いたします』
「あっ。行かないとね」
「おう」
サムの想いはまだまだまだ届きそうにない。
2人は隣同士の席をとっている。向かう搭乗口は同じだ。
「なぁ、彼氏っていないのか」
「いないね」
「こうやって一緒に旅行できるのもあと少しかもしれないぞ」
「そうね」
今回はサムが来てくれたから問題はなかったが、今後もサムに付き合わせるのは申し訳ない。
「このために彼氏を作るもの必要なことかもしれないわ」
サムの思惑とは別の思考を繰り広げる佳織。
「東京にいい奴がいるのか?」
「いないのよねぇ。何とかしないと」
「だなぁ。俺なんてどうだ?」
「いや。サムはきちんとガールフレンド作らないとね」
サムはほとんど男性の友達ばかりで女性と話しているところはあまり見かけないかった。
「ほんとに佳織って鈍いよな」
「え?」
「実は俺……」
『離陸いたしますので、シートベルトをおしめください』
サムとは帰りは途中まで一緒の道だ。
東京までかえってきてからオーストラリアに行く便に乗る。
「あ、もうそんな時間なのね」
ことごとくタイミングが合わないものである。
機体が斜めから平衡になり要シートベルトマークが切られる。
「少し耳が痛むけれど仕方ないわね」
「何か飴でも貰うか」
「そうしてもらえるかしら」
CAさんに言ってイチゴあめをもらえた。
子供たち用で少し恥ずかしくなる。
「嫌だわ、もう少し旅になれないと」
お土産ばかり持ってきて耳の不快感軽減の品をほとんどスーツケースの中にしまってしまった。
「大丈夫さ。すぐになれる。気晴らしに映画を見よう」
「そうね。あ、この映画行きも見たわ」
「ああ。そうか。月が変わっていないからそのままなのか」
どうやら月が変わらないと娯楽は更新しないらしい。
「つまらないわ」
カチカチとテレビのチャンネルをザッピングしていく。
「音楽ならいいのあるかな」
カチカチと移動させると知っている音楽が流れていた。
Jポップだった。
「久々の日本語だ」
聞いていると懐かしくなる。
やはり自分は日本人なのだと感じる。
「オーストリアもいいけれど日本がやっぱり安心するのよね」
佳織たちののる機体は順調に降下をはじめ、着陸態勢に入る。
「やっぱり緊張するわね」
「だな」
サムとは日本のターミナルで別れた。
彼は何やら言いたいことがあるようだったが、何だったのだろうか。
考えても答えの出ないことは考えないのが佳織の主義だ。
両親に迎えに来てもらった。
今度の日本食はうどんだった。
「やっぱり日本料理はおいしい」
それを確認するたびに日本への愛が増していくのだった。
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