留学準備2
面接が始まった。
クラスの中で受験番号が割り振られ、面接室へ5人が呼ばれる。
30から40分程度で進んでいく。
厳密に何分間とは決まっていないようだ。
(次は私の番)
グループには自信家の男性、気の弱そうな女性、気が強そうな女性、知的で自信はそこそこありそうな男性、そして私だ。
「みんな頑張ろうぜ」
「ええ」
「はい」
「……はい」
「……おう」
個人個人で自信に応じた返事だなと思った。
☆☆☆
面接会場に入場したら、さっそく英語での質問だ。
「では、なぜ自分の希望に行きたいのかね」
佳織は英語で答える。
「私は自分の夢のために現在の希望を貫きたいです」
「夢とは?」
「外国で働いて自立して生活するためです」
「なるほど。他の国ではいけないと?」
「私は日本文化とオーストラリア文化の比較をしたいと思うので譲れないなと思うわけです。ほかの方にはほかの方の目的があっていけないことではありません」
「なるほど。では他の人はどうかな」
気の弱そうな女性は同じく英語で答える。少したどたどしい。
「私は見識を広めるためにオーストラリアがいいと思います」
「見識をどう広めるのかね?」
「えっと。その」
「どうしてこの国にしたのかな?」
「せ、選択肢にあったので」
「そうですか」
他の人にも質問をむけるが、
おおよそ選択肢に合ったのでという回答だった。
(そこは違う表現の方がいいのに)
そう思う場面も中にはあった。
自信満々の男性の方に質問が回る。
「次の方はどうですか?」
「自分にこそ海外はふさわしいと思うからです」
「ふさわしいとは?」
「外国人と対話できるのは英語ができる選ばれた人だけですから。
当然貢献できると思います」
「そうかね」
面接官は何やら書き物をしている。
それが男性にもわかったのだろう。
鼻高々に自分がどれ程優れているか。
自分の望み通りに進めばこの専門学校の名が売れるかについて切々と語っていた。
(文法も発音も文句はないのに、話している内容が危険思想すぎやしなか)
「なるほど。わかりました」
「ご退出くさい」
最後まで英語でアナウンスされる。
礼をして皆、退出していく。
「ありがとうございました」
礼を述べたのは佳織一人だけだった。
☆☆☆
2日後に発表があるそうだ。
「早いわよね」
「確かに。結果はほとんど面接日に出ていたんだろうぜ」
ひそひそと話し合う声だけが聞こえる。
「皆さん、お静かに。これから発表いたします」
このアナウンスも当然英語だ。
「以下の番号の方はオーストラリア枠。他の方は自分でどこの枠に入れたのか探しておくように」
(さすが海外流を取り入れている。アナウンスに値しない人は自分で探せとは)
佳織の番号があった。
「よかった」
これでの望み通りの計画で専門学校生活を送れそうだ。
「あの、教授。番号が3グループのどこにもないんですが」
会場にいる一番権威があると思われる先生は口を開いた。
「ああ。言い忘れていた。
3グループに配属できないと見込んだものもいる。
そのものは海外実習には出ることは出来ない。
我が校は日本国で人間性を磨くために福祉事務所と提携している。
そちらで外国人留学生のメンタルケアをしてもらう」
興味本位で聞いてみる。
「どのような人物が該当するのですか?」
「主に英語圏に行って恥をさらす可能性の高いものたちが該当している。
外国の文化を学ぶという本来の目的に沿わず、
日本の評判を落として帰ってきそうな人物を
わざわざ関わらせることはできない」
どうやら数名該当しているようで自分の番号もないと騒いでいる。
(なるほど。語学を得意で選民意識の強い人間はほかにもいるってことか)
専門学校とは思終えないほどにカリキュラムも充実している。
様々な機関の協力あってのことだ。
お金も相当動いているにちがいない。
(やはり、はじかれる人がいるもの当たり前だよなぁ)
自分が流ちょうに話せることも必須だが、
相手をリスペクトできるものでなければ
異文化交流はできないということだろう。
(これは肝に銘じておかなければならないな)
どんなときでも相手を敬意を払うことは日本国内でも通じることだ。
3か月間の実習が幕を開けようとしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます