高校2年の冬のバトル

 高校2年になった。

 クラス替えでは由美とはまた同じクラスになれたのが救いだった。

(これからも勉学に集中できるわ)

 相変わらずの忙しい日々を送っている。

 

 部活動でも新入生が入ってきて、

 今までと同じように活動できている。

 菊池洋子キクチ ヨウコ

 新たに入って生きた1年生だ。


(廃部は免れたらしい)


 それでも大きな活動もなく、

 顧問も継続でこれまでと同じ活動が続く。

 去年と同じように行事が進み、

 試験もあり、バイトも入れている。

 そしてほんの少しの部活動も行っている。


 季節は大きく流れ、高校2年の冬のこと。

 進路調査票が配られた。 

 珍しく、家族会議が行われた。

 夕食の後、両親と話し合う。


 前々から思っていたように

 やはり最大の敵は母親だった。

「高卒で働くですって?」


 持っていたマグカップを乱暴に置き、

 臨戦態勢へと入る母。


「4年制大学へ行きなさい」


 母がかなえられなかった夢だ。

 いずれそう言うことは分かっていた。


 母は怒鳴っているが、父親はのんきだ。


「お金のことは心配しないでいいから、

 好きな進路へ行きなさい」


「あなた! 絶対に四年制大学へ行きなさい。

 そのために勉学だって内申だって頑張ってきたんでしょう」


「そのためじゃないわ。お金をためて外国へ行くためよ」


「はぁぁ。いい加減にしなさい。

 あなたは日本国民なの。だから日本で働くの」


「そんなこと勝手に決めないでよ。

 日本以外で働くためにここまでやってきたんだから」


「そんなこと言っていないで、現実味なさい」

「現実って何?」

「結婚して子供を産むんでしょ? 私に孫を見せてよ」


「いつの時代を生きているのよ。私は子供を産まないんだから」

「そんな勝手なこと許されません」

 ここで、バイトで培った大声を利用して母を威嚇する。

「私はそうしてして生きるの!!」


「いい加減お母さんの理想の娘を卒業させてよ」


「そんな風に育てた覚えはありません」

「そんな風に育てたから今があるの」

「ワーキングホリデービザもきちんととれるようにしてあるから」

「もう……いい加減にして」


「日本でやりないなと思った時に高卒では大変だよ。

 専門学校でも短大でも何でもいい。

 きちんとした学歴を付けておくことはマイナスにはならないと思うよ」


「そうかな」

「そうさ」

 父親の自信に少しだけ決意が揺れる。

「なら専門学校へ行こうかな」


「いいじゃないか。語学の学校だってあるだろう」

「うん。そうする」

 調査票には語学の専門学校を記入する。


 ☆☆☆


 三者面談でのこと

「お嬢さんの成績ならもう少しいい進学先があるんですけれど」

「どこですか。先生?」

「3つ選択肢がありまして短大の学校の指定校、

 もう一つ上のランクの専門学校がおすすめですね」

「指定校にしたら、また」

 脳裏には全力を出さないと

 周りが迷惑するのではないかといったことを考えていた。

「はい?」

「ほかの人がいなかったら行くということはできないんですか?」

「時期的に難しいですね」

「そうですか」


「何をしょんぼりしているんですか。

 狙えるものがあるなら全力でとりに行くべきだわ」


「その通りです」


「もう少し考えてみます」


 実際、どれだけ上を目出せばいいのかわからない。

 必要ないかもしれない。


 でも必要になったときには遅いかもしれない。

 だから人は頑張るんだろう。

 必要になったとき、困らないように。


「うーん。最善が何かわからない」


 考えても答えが出ないようなら、

 今の最善と思われることをしなくてはならない。


「コレでやってみよう」

 担任の先生や親は文句言うかもしれないが、

 自分を信じて行きたい志望校を選んだ。





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