バレンタインデーとホワイトデー

 2月はバレンタインデー

 ノリのいいクラスは今回も全員必須だと言い出した。

「……ほんと困るよね」

「うん。――誰に渡そうかな」

 2人とも彼氏はいない。


 クラス内でイチャイチャしているカップルも数組いるが、

 2人とも勉学の方が大切で

 楽しかったりするのでクラス内ではパッとしないほうだ。

「困った……」

「本当ね。どうしようかな」

 由美は本当に困った顔をしている。


 2月14日当日

「私はバイト先に義理チョコわたす」

 佳織は小さな梱包のものを6個程度持ってきた。

「そっかぁ。いいなぁ。誰にしようかな」

 由美はチョコを1つ持っているが、誰に渡すかは決まっていない。


 佳織のは市販のチョコだが、勤務終わりには嬉しいものだ。

「由美は最後に残った人にあげたらどう?」

「喜ぶかなぁ」


 ホームルーム後、渡す時間になった。

 ほとんどの人は相手を決めていたらしくあっさり渡して帰っていく。


(こんなにもあっさり決まるものなのだろうか)

 クラスで最後まで残った人は担任とラブラブなカップルだった。


(いや、カップルも担任もマズイでしょ)

「どーしよっかな。このチョコ」

「自分用にしてみたら?」

「そーする」


 由美のチョコは悲しい結末を迎えたが、


 佳織はバイト終わりが勝負だ。

「義理チョコです。よろしければどうぞ」

 スタッフルームにおいてみるとすぐになくなった。


「義理なら仕方ないな」といって取っていく男性も多いこと。

(こっちだって本命がいたらあげてないよぅ)


 ちょっぴり不服だが、本命を作ればいいだけだ。


(次のクラスはもう少し落ち着いてくれたらいいなぁ)


 あとは勉強にバイトに

 ほんの少しの部活動をこなしていくのだった。


 相変わらず、部活動はなんにも進展がなく、

 茶道の本を読んでるくらいだった。

(まぁ、学ばないよりはいいけれど、実践がないのがツライところよね)

 出来れば着物を着てみたりお茶をたてる仕草をきちんと覚えたかったのだが、

 そんな伝手も人数も予算もないのである。

 我慢して自分で自己練習しかない。

(もっと稼いで着物そろえるものいいかもしれないわ)

 漠然としたいことは見えてくる。


 3月は卒業式。

 これで一年最後かと思う。

 お世話になった先輩も一人いる。

 花束を買って渡すだけの作業だが、

 まずそんなに面識がないから緊張する。

「ありがとう。嬉しいわ」

 先輩に滞りなく渡せてほっとする。


 あっという間の卒業式。

 こういう感じで一年間はあっという間に過ぎた。


「さて、最終学期の成績は――よし」

(努力の甲斐あって5が多い。発言だってしっかりしてたしね)

「あー。5欲しかったな」


「今度頑張ればいいよ」

「いいよね。5取れて。今日は説教だなぁ」

 由美はがっくりしている。

「5は取れたけど、私だって何を言われるかわからないよ」


 かわいそうなので今度ドリンクをおごってあげようと思った。

 さて、親の希望通りの成績を残しているわけであるが、

 もっと上を目指せといわれることは容易に想像がつく。

(もっと5を多くしろとか言われるかもしれないし、

 大学に行けって言われるかもしれない)


 どちらにしても親に報告するのが憂鬱なのは間違いなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る