高校生活2

 10月はハローウィン。

 盛大に祝おうとするクラス。

「みんな好きだねぇ。仮装」

 独り言をつぶやいて、あきれるしかない。


 まだ当日には程遠いのに

 メイクの練習と衣装のチェックがあるために

 ことあるごとに仮装した人が出るのだ。


 由美もひとりごとに反応してくれる。

 由美は結局、帰宅部で勉学を優先させたようだ。

 

 彼女も勉強においてはライバルの一人だ。

 成績はだいぶ良いらしく、

 どの教科でも学年5位以内には入っていた。


 レベルを落として入ってきた万能型の人間だ。


「気合入っているよね。みんな」

 由美は冷めた目で仮装をしている人を見ている。


 みんながみんなトリックオアトリートと叫んで

 授業にならない日もあった。


 英語のトークの授業ではたくさんの叫び声が

 連なって大変だった。


 さて、仮装当日には担任を驚かせようという話になり、

 クラス全員で仮装して驚かせることになった。

(こんなことをして楽しいのかしら)


 外国の遊びだが、

 このクラスはノリノリで行事に乗っかっている。

(テストの点とか大丈夫なのかしら)

 

 自分は何とかなるが、

 

 何ともならない人が先導しているようで気味が悪い。

 みんなが声を合わせて叫ぶ。


「トリックオアトリート!」

「変なことやっていないで勉強しろ!」

「はーい」

 一部の人は不満そうに声をあげている。

 リーダー格の女子は喜んでもらえると思ったが、

 叱られているのが気に食わないようだ。


 予想通りに一喝されたが、

 その割に担任の先生は楽しそうだ。

(お菓子でももらえるのだろうか)


「まぁ、怒られると白けるよね。実際」

「まぁね。でもふざけていると本当に成績落ちるから」

「確かに。親に激怒されるのはごめんだもんね。じゃ、また明日」

「じゃあね」


 11月はバイトにいそしんだ。

「今月は稼げるわ」

 クラスのイベントが一段落してシフトに入れる日が多くなった。


 本当はもう目標金額には達しているが、

 欲しいものに目を向けるとなかなかやめられないものである。


 ネイルもしたいし、部活のものをそろえるのだってお金が必要だからだ。

「頑張って仕事するから、

 時給アップしてくれないかな」


 今の仕事場は努力次第で昇給ありだそうだ。

 その情報を信じて日々頑張るしかない。


 ちなみに部活は5回程度しか出ていない。

 バイトをしながらだとやはり無理がある。

 つぶれかけの部活に入ってもあまりにもやることがない。

 

 3年の先輩が一人いるが、 

 あいさつとIDを交換してからは何の音沙汰もない。

 一応部活動のあるとされている日は行くようにしている。


 12月はクリスマスと期末テスト

「よし。今月は気合を入れていきますか」


 クリススマスの時期のバイトは好きだ。

 かわいらしい制服になるし、帽子もつけられる。

(モフモフして暖かいんだなぁ。ありがたいよ)


 1月はテスト、バイトの両立が求められる。

 もう家庭にいる時間がだいぶ少なくなってきている。

 寂しくもあり、目先の欲が買っているのもある。

 ネイルで爪を彩るのもメイクしているのも楽しい。


 母からのノルマもあり、

 自然と勉強も頑張るし、

 ノートも綺麗に確実に取っていく。

 休みなんて取っていられない。


「さて、テストだ。勉強するぞ」

 身体を壊さない程度の無理をしないといつまでも認めてはくれない。

 バイトでも

 学校でも。

 ひしひしと伝わる男尊女卑の観念。

「今から力をつけていかないと」

 決意を胸に今日も夜更かしをする。

(認められるために)

 

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