憧れのその先へ

 憧れは頑張る原動力にもなる。

 私は中学3年生になった。

 将来の目標はサンタクロースに関する職に就くこと。

 今は部活には入らずに、勉強をしていた。


「結局、2位と3位を行ったり来たりだったな」

 通知表には4と5の数字が並ぶ。


 これで進学の幅は広がっていくだろう。

 学級委員もやったし、

 進学するにあたっては有利に進むだろう。


「バイトOKの進学先かぁ」

「普通科でもいいのかな。単位制なら大丈夫かしら」


 悩む案件だ。


 特殊な進学形態だが、

 自分がしっかりしているのならばっちりだろう。


「きちんと資格に対する時間欲しいんだよなぁ」

「部活動の時間も大切よね」


 自分が行動できる範囲内で条件に合う学校を吟味する。

 ブツブツと言いながら、自分の希望を紙に書きだしていく。


「ここかな」

 だいぶ偏差値に余裕があるし、

 担任からも、もっと上の方を目がした方がいいのではないかといわれた。


 部活動とバイト、そして勉学をしていきたいからここにする。

 母親がトントンと自室に上がってくる音がした。

「佳織、サンタさんからお手紙よ」

「え?」

「今年は特別なんですって。預かってきたわ」

「そう。嬉しいわ」

 開いてみると小さい頃の筆跡と同じだった。

 「ありがとう」

 親にお礼を言えるようになった。


 ☆☆☆


『勉学に励んでいるようで何よりだ。

 その頑張りは誰もができるものではないし、

 続けられるものではないと思う。

 だから自分の夢に向かって努力していってください』


(サンタさん、見ててくれるのか)

 ツラいと言ったらうそになる。


 いつも一番を目指して、

 きっちりと時間に合わせて動いていて


 計画通りにいかないこともあるし、

 友人関係に悩むことだって恋愛関係に悩むことだってある。


 それでも夢のために頑張るって決めたら

 弱音を吐かないようにしている。

(今日だけはつらいって泣いてもいいよね)


 夢はサンタさんに関する仕事がしたい。


(日本にあったらよかったのに)


 日本語で仕事が出来たらよかったのに、

 きっと関係する場所は英語を使わないといけないから。


 母国語だけでは弱い。

 日本人は英語を喋れない人が多いというから


 今から準備して間に合うかどうかだ。


 ☆☆☆


 1月の終わりごろ

 入試の資料を出すために志望校別に下校していった。

「どうなるんだろう? 不安だよね」

「ねぇ。受かるのかな?」

「受かるといいね」

 希望を口にするしか言えない。

 自分のことはもう受かることは9割確定しているからだ。

 よほど態度が悪いそぶりをしない限り。


(やっぱりレベル落としすぎたかな)

 受験特有のひりひり感を味わえないのはなんか損した気分だ。

 

 自分の時間を確保するためにはどこかで妥協もしないといけないだろう。

「面接、頑張りましょう」

 自分にできることはせめて明るくふるまうことだけだった。


 ☆☆☆


「ありがとうございました」

 面接が終わり、仲良く帰る時だった。

「あーあ。こりゃ落ちたなぁ。

 ったく。できのいい人がレベル落として来たから枠が減っただろ」

「あー。まぁね」

「自分に妥協するやつがいると迷惑だよな」

「まぁね」


 確実に私のことを言っている。


 そう思われるのも仕方ないのかもしれない。

 全力を出せば、2段階は上の学校に行けるのだから。

「せっかく高校進学するんだから楽しんでいけるほうが大事だと思うの」

「そうよね。ちょっと変わった選択肢だけど尊重されるべきよね」

 同意してくれる友達がいてくれてよかった。


 ☆☆☆

 掲示板に同じ受験番号があった。

 結果的に受かったわけだ。

 これからどうしていくかわくわくしている。

 必要な体育着も発注して、説明会にも出席して高校生活に備える。

「これから3年間はここで過ごすのね」

 

 周りを見渡すと同じ中学進学者は数人程度。

 かなりの人数が面接で落ちてしまったし、

 テストでは入ってこられなくったのだろう。


(あの発言も嫉妬だったのかしらね)


 嫌な思いもしたが、自分はこれからの生活をしていくだけだ。


(せっかく努力していったんだからこれからも頑張ろう)

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