働き方
バイトの面接には受かった。
「来週からでれるかい?」
「はい。大丈夫です」
「そう。なら、これね。バイトの制服」
「ありがとうございます」
「いい感じだね」
「はい」
これでしばらくしたらお化粧代が捻出できる。
あとはトイックもう一度受けてみようかな?
そうこうしているうちにバイトが始まった。
(思ったよりも忙しいな。以前のやり方とほとんど同じだからか)
任せられる仕事も最初から多い。
バイトにテストにと奔走しているとあっという間に時が過ぎた。
期末のテストが終わり、返却の日が来た。
配られたテスト結果をぺらりと見せる律子。
「ああ、また学年2位かぁ。1位はあんたでしょ」
「あ、ちょっと。見ないでよ」
「ほーら。やっぱり1位じゃない」
「フランス語は3位だったよ」
「別のカリキュラムとっている私には関係ないのよ。
あなたがフランス語苦手なのは」
辛辣である。
そうこう言っているうちに学期は終わり、修了式の日となった。
「寒い。律子、スピーチ早く終わらせてね」
「こっちだって緊張しているのにこんなに寒いなんてつらいわ」
予報では雪が降るのだとか。都内では警報がどこもかしこも鳴り響いている。
律子の名が呼ばれ、壇上へ上がっていく。
「私がこの学校を志望したのは――」
修了式は律子の英語スピーチで幕を閉じた。
短くはなかったが、長すぎることはなく生徒に安心感を与えた。
「良かったわよ。これで志望する生徒が増えるわね」
「またそんなこと言って」
「そういえば進路決めたの?」
「まだ……」
ここは3年制の専門学校だ。
論文と面接をして卒業となる。
誰でも卒業できる学校と違い、厳格に実力を求められる。
「わかっているわ。確実に卒業単位を取っていかないとね」
余裕だと思っていると足元を救われる。
何においても慢心は身を滅ぼすのだ。
☆☆☆
佳織たちは専門大学1年目を終えた。休んでいる時間はあまりない。
2年の終わりには進路を決めないといけない。
専門学校生2年目の春。暖かくなり薄いコートにしようかと考える頃。
そのための模擬試験は2年になったときから受けられる。
「さて、思ったことを言ってみてくれ」
英語で自分のこれからのこと、将来のことを説明し、
両親や先生に許可をとらなければならない。
「はい。私の名前は――以上で私の将来像を終わります」
「はい。よくできたね。でもまだやりたいことが弱い。サンタに関わる具体的な機関名が欲しいね」
「やはりそうですか」
なんとなくこんな感じではなく具体的な機関名やどれぐらいの機関で達成できそうかということまではなさせる。専門学校という日本では地位が確立しきれていない学校だからこその指導方針だ。
(これは本当にスパルタ方式だ)
親も納得させるしかないとは苦しい課題だ。
母親も反対している状況は相変わらずで、
納得できる答えを見つけないと卒業はできない。
「きちんと調べないとね」
図書館へ行って自分の進路を決定させる。
日本国籍のままサンタクロースの聖地へ行く。
フィンランドのロヴァニエミに行くことにした。
最初は冬季限定のバイトとしてだ。
「こんな感じで計画は立てたけれど、うまくいくかはわからないわね」
採用されるかは勝負だ。
母親にも話してみた。
「やりたいなら行ってみなさい。通用しなくて帰ってくればいいわ」
何ともありがたくないお言葉をいただいた。
一応承諾ももらえたということで早めに面接をしてもらう。
計画通りにうまくいけば今年度の語学先はフィンランドでアルバイトになるだろう。面接を受け、とりあえずの合格をもらう。
「気持ちはわかりました。雇ってもらえるかは先方の都合もありますからうまくいかなかったときのことを考えておきなさい」
「はい」
冬にはお金のかかることが決定している。
それまでにできるだけお金を稼がないといけない。
「シフト、限界まで入れさせてもらえませんか」
「いいぞ」
「ありがとうございます」
目的をあまり知らない店長も許してくれた。
あとは時期を待つだけだ。
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