26:D

悠の自宅へと急いで向かう途中、何度も何度も最悪の結末が頭をよぎる。

私の予感はだいたい当たる。でも今回ばかりは……、神様。


私たちカプセラーの概念に「神様」なんてものはない。

でも今夜ばかりは本や映画で見聞きした、そのか細い存在に頼るしかなかった。


全速力で走ること15分。家の手前で止まった私はいったん物陰に隠れ、注意深く周囲を観察した。正気を失っている彼との直接対決だけは、絶対に避けなければならない。


室内の明かりは消えている。


私は気配を殺したまま玄関へと近づいていった。さすがにドアベルを鳴らすわけには……。そう思ったとき、セキュリティ装置に血が付いていることを発見した。さらによく見ると、ドアとドアノブにも付着している。


深呼吸をし、ゆっくりとドアノブをひねろうとしたが動かなかった。施錠されているようだ。室内からも誰かが動いているような気配は感じない……。


何もかも、手遅れだったのだろうか。

悲観に暮れそうになったとき、スマホに着信が入る。エリアに戻った上官からのコールだった。


「D、今どこだ。無事なのか? こっちは悪い知らせだ。帝都南西地区で問題が起こった。鬼月悠がこちらの部隊と交戦中だ。D、一度エリアに戻ってこい!」


南西地区? 家には立ち寄ったけど、両親とは鉢合わさなかったのだろうか。ホッとしたのもつかの間、まだ悠が暴走状態であることは確かであった。戦闘エリアに私も向かわなければ。


「上官、責任は私にあります……。だから私はこのまま現場へと急行します。

悠の両親……、まずUに連絡を!!」


肩で大きく息を吸うと、ゆっくりと吐き出して心拍数をもとに戻す。

私は上官からの命令を無視し、南西地区を目指してまた走り出した。


今度こそ、間に合いますように。





つづく

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