09:U

あの日以来、僕らは定期的に例の公園で話をするようになった。


お互いに最近触れたエンタメの話から始まり、哲学的なネタや宗教・道徳、さらには生死観に至るまで。カプセラーのイスと僕とは考え方が違いすぎたが、そのギャップを実感できるのがとても面白く、いつも新しい発見があるため、ここ最近は毎週のように通っていた。そんなある日、家を出ようとした僕は庭先で母に呼び止められる。


「悠、最近楽しそうね。オシャレまでして……。まさか高校で彼女でもできた?」


「違うよ、そういうのじゃない」


中学2年生の時、初めてのデートがバレたとき母はなぜかとても喜んでくれた。反抗期のさなか、過干渉な母が本当に嫌だったけど、涙さえ見せるその姿にとても驚いたものだ。友達からは散々バカにされたっけ……。だからイスのことはしばらく黙っておこうと思う。


土曜の15時から、いつもの公園。外出禁止令が出る18時までの3時間が、僕にとっての第二の居場所となった。詰所でのゲームも好きだが、イスとの禅問答みたいな不思議な時間もとても楽しい。



「イスはどうしてこっちの世界に出て来たの?」


今日の話題のネタがほぼ出尽くしたタイミングで、ふとこんなことを聞いてみた。


「私たちは“第一世代”。初めて社会に出たグループなの。一部の例外を除いてね。それに、これまでもエリアの外に出たことはあったけど、行動制限がなくなったのはつい最近」


「カプセラーってずっと昔から噂はあったけど、実際はそういう感じなんだね」


曰く、僕たちがこれまで見聞きしていたマスコミの情報はどれも修正されていたらしく、驚きを通り越してあきれ果ててしまった。所詮、一般人には知らせなくていいということか。


「悠が通っている学校……。エリアの外ってどんなことを教えてるんだろう。

こっそり授業に出られないかな? 案内してよ、今度さ。ね?」


このような感じで、時々イスは無茶な提案をしてくるのだった。




つづく

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