11:U
イスたちカプセラーについて、あまり突っ込んだ話は振らないようにしていたつもりだったが、今日は彼女を怒らせてしまったようだ。原因は僕にある、と思う。
立場や考え方が異なるのは承知の上で、自身の認識を合わせるべくイスに尋ねてみた。
「気分を害したらゴメン。その、イスたちカプセラーにはいわゆるリーダーみたいな人はいるの? 僕らでいうところの大統領とか、首相みたいな」
「詳しくは言えないけど、指導者は2人いた。といっても何十年も前の話。
今は二代目が統率してくれているけど、私は会ったこともないわ……」
少しの間があったが、イスは答えてくれた。やや言いづらそうに話す彼女からは、話題を変えてほしいと言わんばかりのオーラがにじみ出ている。空気を読んだ僕はとっさに別の話題を振った。
「……イスは好きな食べ物ってある? 僕はナッツ類に目がないんだ。いつも食べてる。スナック菓子は身体に悪いからって、母さんは絶対買わない」
「ナッツなら私も好き!」
話に食いついてきたことを確認すると、僕はカバンに入れていた袋を取り出し、ミックスナッツをイスに渡した。そしてクラスメイトを爆笑させた、とっておきのネタを彼女に披露したのだ。
「殻をむいたクルミの実ってさ、小動物の脳に似てない? ほら、この角度で見ると……。先週、生物の授業で標本と比べてみたんだ。授業中だったけど、みんな大爆笑!」
スマホで撮影した脳の標本をイスに見せた、その時だった。
彼女は顔を真っ赤にしてその日二度目の罵声を僕に浴びせた。
「最ッ低! もうクルミ食べられないじゃない!! 気持ち悪い!!!」
場を和ますつもりが、イスをさらに怒らせてしまったようだ……。
やっぱり僕たちとは感性が少し違うのだろう。
つづく
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