12:D

先日のお詫びのつもりだろうか。悠は私を学校へと非公式に招待してくれた。彼の通う学校は校則もゆるく、IDの提示や顔認証システムも笊で、ある程度自由に出入りできたのだ。でなければ、あの晩トイレを借りた時点で私は捕まっていただろう。


問題は制服だったが、これは意外にもエリアで調達することができた。一般人との接触に感づいた上官に問い詰められ、悠のことを喋ったことがきっかけとなり「組織の意向」ということで私は社会勉強という名の、潜入ミッションを課せられたのだった。


出席簿に名前がない私が教室で授業を受けるわけにはいかないが、校舎内を自由に歩き回ることができるようになった。以前忍び込んだ時とは違う「昼間の学校」を私は堪能することができた。


「よう、何か面白い発見はあった?」


廊下ですれ違った悠が話しかけてきた。

私は悠の袖を引っ張ると、見晴らしの良い屋上へとあがる。


「外から観察してたけど、学校の授業って非効率な学習方法ね。寝てる人もいたわ」


「アハハ、そうだろう? イスはそう言うと思ってたよ」


一緒に公園で過ごした時間のせいか、悠は時々私の事を分かったような台詞を言う。これが共感力というものだろうか。不思議とイヤな気分ではない。



「壇上のスクリーンに世界人口のグラフが映ってた。

……悠は、この学校で今の総人口が何億人って教わってるの?」


「この学校に限った話じゃないと思うけど、地球には120億人いるんだってさ」


なるほど……。彼らと総人口の認識には差異がないみたいだった。私はその続きを言おうか迷ったが、悠には伝えることにした。


「そのうち、私たちカプセラーはどれくらいいると思う?」


「世界中で? 難しいなぁ、うーん。1万人、とか?」


「……8億4000万人。2075年現在における世界人口の約7%がそうよ」





つづく

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