13:U
にわかには信じがたい内容だった。すでに8億人以上のカプセラーが社会に溶け込んでいるって? 僕たち自警団は世界中、それこそ無数に存在するのに今の今まで気づかなかったってことなのだろうか。カプセラーというのは都市伝説の範疇ではなく、世界規模の超巨大組織であることは明白だった。
「詰所で危機を訴えても笑われるだけだな。
結局僕らは何も知らなかったってわけだ……」
今日の出来事を自室で振り返り、自嘲気味にケタケタと笑うと自警団に参加するのが馬鹿馬鹿しく思えてきた。ここまで話が進んでいるとなれば、各地の自警団すら政府主導のマッチポンプではないのだろうか。団員たちとゲームのマルチプレイで盛り上がった楽しい思い出もこれで終わりか、なんてことを考えていると家のチャイムが鳴り、キッチンから僕を呼ぶ母の声がした。
「悠、ちょっと出てちょうだい! 今こっち手が離せないの!」
自警団のメンバーかな? お誘いならもう断ろう。そう思い玄関を開けると、そこにはイスが待っていた。しかもタイミングが悪いことに、父も仕事から帰ってきたようで送迎車が家の前に停まる。
「母さん、僕ちょっと出かける! あ、父さんおかえりなさい!!」
ゴシップ好きの母がいる手前、日本人離れした容姿のイスを長居させたくない。僕はイスの腕を引っ張り家の外に出ようとしたその時だった。彼女の顔を見た父が驚いたような表情でこう言った。
「D……と、悠!?」
「デートじゃないって!
18時までには帰るけど、ご飯は先に済ませおいていいから!」
そして家から少し離れたコンビニに移動した僕らは、ドリンクを2本買いイスに1本渡した。
「さっきのが悠のお父さん……?」
「そう。家には母さんもいたけど、イスを見られなくてホントよかった」
「お父さんって普段どんなお仕事をしているの……?」
「バイオファームの所員。
ほら、いつもの公園の近くに父の研究所があるんだ」
つづく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます