31:U

エリアに戻った僕は、より強力で堅牢な拘束衣を着せられ、頑丈な檻のようなベッドに寝かされた。


当然の処置だ。


少しずつ、記憶が戻っていく。僕がカプセラーであること。同胞を何人も手にかけたこと。父さんを……殺したこと。


父さんは最後にUを継げと遺した。


心身が落ち着いたら、もう一度イスから救済計画について教えてもらわなければいけない。UとD。そして父が言った「先輩」と、その「約束」について。


現実を受け止めるにはまだまだ時間が足りない。


この牢獄のようなベッドの上で、僕はまたしばらく考え込むことになる。

しかし、ひとりで背負ってはまたあの時のように暴走してしまうかもしれない。


今の僕にはイスが必要だ。


あの頃のように、公園でまた話がしたい。



―—。



この部屋に入れられて何度目の夜明けを迎えたのだろうか。

ある朝、檻の錠前が外され、部屋にイスが入ってきた。


何て声をかければと、そう思った瞬間、イスの後ろに立つもうひとりの人物に目を奪われる。


「母さん……!?」


「聞きたいこと、たくさんあると思うけど……。まずはこっちから説明させて」


そう言ってベッドに腰をかけると、イスは静かな口調で話し始めた。





つづく

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