17:U
相変わらずメディアは暗いニュースしか流さず、むしろカプセラーとの対立を煽るようなものばかり。イスとも会えない日々が続き、いつもの怠惰な僕に戻っていた。
国内の自警団はというと、活動はより過激になっており、なによりもイスと対峙したくない気持ちもあって詰所とは距離を置くようになった。
ある日、街で久しぶりに団員と会った僕は新作ゲームの話で盛り上がった。そのゲームとは「人生シミュレーター」とも呼ぶべきもので、幼少期の写真をアバターとして取り込み、圧縮された時間軸でどのように成長させるのかを他のプレイヤーと競うリアル・シミュレーション・バトルだ。久しぶりの楽しい話題に乗り遅れたくなかった僕は、帰宅後すぐにそのゲームを始めることにした。
≪あなたの写真を登録してください。
そしてAI(わたし)と共に成長を見守りましょう≫
なるべく幼い頃、生まれた直後の0歳くらいの写真を取り込むとステータス上昇率が高いらしい。団員からそう教わった僕は、母にデータが残っていないか尋ねてみた。というのも母は無類のカメラマニアで、昔からことあるごとに僕をフレームに収めてきたのだ。
「幼稚園? 小学校の入学式? お誕生会?
ぜーんぶディレクトリで分類済みよ!」
母は嬉しそうに返事をする。
「いや、もっと昔の。生まれたときとか、1歳の頃ってどこに保管してある?」
「……悠、古いデータは俺が上書きしちゃってもうないんだ。
なあ母さん、幼稚園のデータならそのスマホに入っているよな?」
話に割って入ったのは父だった。
なんだ、がっかりだな。せっかく新作ゲームを存分に楽しもうと思ったのに……。
僕は母のスマホからいくつかの写真データをもらい、ゲームに反映させた。そのうちの1枚に目が留まる。写真に目を凝らすと、イスとよく会話をしていたいつもの公園が写っていた。
「この公園、昔から全然変わってないなぁ。
父さんの研究所もこの頃からあったんだね」
つづく
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