06:D

自警団に追い回されるわ、変な男と関わってしまうわで、まったくツイてない夜だった。やっとの思いでエリアに帰り着いた私は、予想通り上官からきつめのお叱りを受け、不貞腐れて自室に戻ってきた。


「ただ、新品っぽかったから借りただけよ」


そう呟いて少し大きめのスニーカーを棚に入れると、いつもの薬を飲んでベッドに転がる。


自警団、変な男。

……『カプセラー』。


私に生物学的な親はいない。100%純粋培養で生まれた人間。カプセルの中で10歳まで育てられ、そこから少しずつ外に慣れて……。学んできたもの以上に、人間社会はずっとずっと面倒くさそうだった。


家族の柵、夫婦の絆? 血筋に家柄と息苦しさMAXの世界。自分の冴えない現状を肉親の責任に転換する狂った風潮もそう。親ガチャに子ガチャ。とにかく上手くいかない責任は「自分じゃない誰か」。


『ガチャ』に『カプセル』とはよく言ったもので、歪んだ世界を整えるために作られたのが私たち、カプセラーだ。壮大なあの『計画』をまえにして『時の指導者』たちは、もうすぐ私たちの時代が来ると言っていた。この荒んだ21世紀を塗り替え、新しい22世紀を創るのは我々だと。


ともかく、今日は収穫があったと思う。彼ら普通の人間たちは自警団を結成して私たちを捜しているけど、ほぼ成果がないこと。そして学生みたいな一般人も混ざっている素人集団であること。


「あんなのに捕まるワケないじゃん……。

でも、今度エリアの外に出たときは、ついでにスニーカーでも返しに寄ろうかな」


未知の人間社会は予想以上に刺激的だった。

私は柄にもなく、時々思い出し笑いをしながら眠りについた。


変な男。

これがアイツに対する私の第一印象。




つづく

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