02:D

息をひそめて茂みに身を隠すこと1時間。私は途方に暮れていた。


「失敗したなぁ……。めっちゃトイレ行きたいし。嫌な予感的中」


夜間外出禁止令の話は聞いていたが、好奇心が勝ってしまった。政府やマスコミが隠そうとしている真相を掴むために、エリアの外へ出たのが運の尽き。巡回中の自警団に見つかり追われていた私は、こうしてスニーカーを泥まみれにして逃げ回っている。


静まり返った街の中、足音が響かないよう塀の影を歩き、見覚えのある建物を必死に探すも、完全に迷ってしまったようだった。何もかも面倒になり、いっそのこと自警団とやらに捕まってみようかとも考えたその時、学校の校舎らしき建物を発見した。


トイレもあれば、スニーカーの泥を落とせる水道もある。欲をいえば保健室にベッドもあるかもしれない。決死のかくれんぼに疲れた私は、学校の塀を跳び越え敷地内に忍び込んだ。


しかし、ようやく身を隠せたのはいいものの、肝心の校舎にはがっちりと鍵がかかっていた。保健室のベッドに隠れて夜明けを待とうと企んでいたが、これでは計画の練り直し。警報覚悟で窓でも割るか……と思ったそのとき、渡り廊下のドアが半分開いていることに気がついた。ドアを閉める音にも細心の注意を払い、静かに校舎の中へと入る。



「夜の学校のトイレ、怖ッ!」



あふれ出る恐怖心を独り言でごまかし、保健室を探した。

泥まみれのスニーカーは、すでにロッカーで見つけた別のものと交換済みだ。


校舎は棟によって学年が分かれているらしいが、この学校も基本的にはその造りのようだった。そして多くの場合、職員室や保健室などは1階か2階と相場が決まっている。私の推理通り保健室は1階にあった。 保健室のドアを開けベッドに潜んで夜明けを待とうと考えた矢先、廊下から男の声がした。



「そこに誰かいるのか!?」



いつだってそう。悪い予感はだいたい当たる。




つづく

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