03:U
自警団と言っても、皆なんとなく活動しているものだし、仮想敵もあやふやだ。カプセルから生まれたとかっていう人間みたいな不穏分子だって……。もちろん逮捕術なども教わったが、入団して2年間そのような場面に出くわしたことも、身近で起きたという話も聞いたことがない。やっていることは夜間の警ら活動みたいなものだと割り切っていた。
ただ、同世代の仲間たちと待機時間にゲームをするのが楽しいというのも参加理由のひとつで、他のメンバーもそれが目当てで自警団にいるようなフシもある。事実、僕はそうだ。しかし、夕食後いつものようにゲームの続きをするために「詰所」へと向かった僕は、スマホに着信した友人からのショートメッセージで我に返った。
『お前、日直当番なのに施錠せずに帰ったのか?
金曜なのにセキュリティキーの返却がないって、警備主任がキレてたぞ』
慌ててカバンのポケットに手をやると、指先にキーが触れた。返却はもちろんドアの施錠もしていなかったのだ。
「今から学校戻るのはだるいなぁ……」
とはいえ、施錠しないまま来週を迎えて教官から怒鳴られるのは目に見えている。幸い自警団に所属し夜間外出が認められている立場だったので、自転車で学校へ行くことにした。
ペダルを漕ぐこと10分。学校に到着した僕は締め忘れた渡り廊下から校舎に入ると、教室がある3階へと急いだ。なにぶん夜の学校というのはただそれだけでも怖い。
教室の施錠を終え、1階の渡り廊下から帰ろうとしたとき、どこかでドアが閉まる音がした。鼓動が一気に高まる。どうやら物音は保健室から聞こえるようだった。僕は腰に装着していた警棒を掴むと、勇気を振り絞って大声を出した。
「そこに誰かいるのか!?」
しばし間が空いたあと、観念したかのようにひとりの女子生徒が姿を現す。
……が、この学校の制服ではないようだ。迷い込んだ他校の生徒だろうか?
「お前、こんな時間に保健室で何をしていたんだ? って……
それは僕のスニーカー!?」
つづく
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