19:U
小競り合いが続く日々に疲れた僕は、政府が発表した外出規制をよそに、例の公園に行くことにした。いざとなれば自警団の身分証も使えるだろうし、なによりここに来ればイスにも会えるかもしれない。
彼女は今どうしているのだろうか。何を考えているのだろうか。
公園をブラブラと歩いていると、ふと遠くの方にイスのような女の子を見かけた。
僕は彼女を追いかけたが、ビルの裏路地に入ったらしく見失ってしまう。
気がつけば父が勤務するバイオファームの倉庫の前で立ち尽くしていた。
「父さんの研究所、こっち側から見るのは初めてだな……」
そろそろ帰るか、そう思ったとき倉庫脇にある小さなドアが開いていることに気づく。その瞬間、イスと初めて会ったあの夜がフラッシュバックした僕は、一縷の望みを託して中へと入った。
どこまで続くのだろう。下へ下へと向かう長い階段を降り、疲労で呼吸も荒くなってきたそのとき、人の気配を感じて僕は物陰に隠れた。どうやらこの地下施設に何人かが集まっているようだ。
「メンバーはこれで全員か? エリアにたどり着けていない者はいないのか?」
――エリア!?
まさか、ここがイスの言っていたカプセラーの拠点なのだろうか。僕は居ても立っても居られず、考ええるより先に物陰から飛び出してしまった。その場にいたカプセラーたちの視線が僕に集まる……。
「ん、もう1人いたのか。では全員、走査の後ひとりずつゲートを進むように」
その後、カプセラーはゲートの前に集まり、右手を装置にかざす。するとゲートは赤く光って開いた。ひとり、またひとりと中に入っていく。カプセラーは右手にナノチップを埋め込んでいるのだろうか。昔イスからそんなことを聞かされた気もするが、もう後戻りはできない。逆に、僕はこのまま彼らに捕まったほうが結果としてイスに会えるのではないかと思い、やぶれかぶれでゲートへと進んだ。
「イスに会えるなら……!」
ダメもとで装置に右手をかざすとゲートは青く光り、あっさりと開いた。
つづく
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