20:D
「U……」
彼の父親はそう呼ばれていた。
自室に戻った私はこれまでの情報を整理することにした。
悠は自分の事も、父親の本当の仕事も知らない。以前、彼が小さい頃の話をしていたことを加味すると、おそらく悠は“ゼロ世代”であること。ゼロ世代とは私たち第一世代よりもずっと先に、試験的に社会に投入されたグループで、誕生から1~2歳のタイミングで里親に出された子供たち……。
そのとき、公園で悠とやりとりしたある出来事を思い出した。
「悠はご両親やおうちのことどう思ってるの?」
「両親? うーん、ウチは貧乏だしハズレだね。父さんも研究者とはいえサラリーマン、母さんはカメラが好きなパートのおばさんって感じ。
いわゆる“親ガチャ失敗”ってやつだ、アハハハ」
悠からそう聞かされた時、私は初めて人を怒鳴ってしまった。
一般社会はそういう風潮だと知ってはいたものの、いざ面と向かってそう言われると許せなかった。
一方で悠はというと、どうして私が怒っているのか理解できていない様子だった。
その後、私の機嫌を取るために学校へ招いてくれたことも、今思えば懐かしい。
育った環境と学んできた事柄。そしてそれらに育まれた個人の考え方。あの頃は、彼の感性とすべてが違って当然だと思っていたけど、それは私の思い違いだった。
彼は、悠は自分の運命に耐えられるだろうか?
己の出自だけではなく、その課せられた使命に……。
「悠は今なにをしてるんだろう」
直後、エリア全域にアラートが鳴り響いた。
つづく
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