15:U
ここ数日に起きた出来事は、僕のキャパを遥かに超えるものだった。人類を均す救済計画、そのためのカプセラー。そして世界を裏で動かしているという時の指導者たち……。お互い時間の都合もあって、イスが言いかけた『D』については聞けず終いだったが、僕のお腹はすでにいっぱいだった。
帰宅するとちょうど夕飯の準備ができたところだったので、食欲はなかったもののテーブルに着くことにした。すると自室から降りてきた父が静かにこう聞いてきたのだ。
「悠、さっきの女の子は知り合いか? まさかDと……」
「だから、デートじゃないって。あの子は留学生の友達!!」
裏で話を聞いていたのか、キッチンから出てきた母は嬉しそうにしている。これは良くない流れだと感じた僕は、夕食を爆速で済ませて部屋に籠った。
これからあの公園のひと時もお預けか。ベッドに横たわりそのようなことを考えているとスマホに自警団からの着信が入る。僕はすっかり抜けるつもりだったが、緊急招集という文字がどうしても気になって詰所へ向かうことにしたのだ。
「よぉ、悠! 最近サボってたみたいだけど、ちゃんと来たな。よし!!」
この世界情勢についていろいろと知ってしまった以上、先輩からのマウントも虚しく感じてしまう。とはいえ、自警団が緊急招集をかけるくらいだから、イスから教えてもらった例の計画に関係するものだろう。僕は団長からの声に耳を傾けた。
「ついにヤツらが動き出した。すでに世界中から報告が上がっているように、カプセラーが社会を浸食しはじめたのだ! 我々は団結し、これらの脅威を排除しなくてはいけない」
壇上に立つこの男は、地元でも有名な保守派の筆頭。おそらくこの詰所に集まった数十人の中で、真実を知るのは僕だけだろう。そう思うとカプセラーのスパイになってしまったような気分になり、自然と脈拍が上がる。
団長からの発破がかかり、詰所の熱量も増す。これからどうなるんだ。そう思ったとき、勢いよく開いたドアから団員が走り込んできた。
「報告します! アメリカの各地で、実弾を用いた武力衝突が始まりました……!」
つづく
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