25:U…!?
階段を上がってドアを開けると、外は一面暗闇の世界だった。
こんなみっともない姿を見られると恥ずかしいな、そう思いながら自宅へと急ぐ。しかし、夜間の外出禁止令のおかげもあってか、他の誰ともすれ違うこともなく家へと帰り着くことができた。
だが、玄関のドアを開けようと静脈認証装置に手を乗せるも、反応がなかった。
改めて自分の手のひらを確認すると、爪は剥がれ、いたるところで内出血もしている。生乾きの血もこびりついているし、装置が反応しないのも当然だった。
「ただいまー!」
ドアを叩いてみたが反応がない。そもそも家の中に明かりがついている様子もなかった。これでは家に入れない。その時、ふと詰所のことを思い出した僕は、久しぶりに自警団に顔を出すことにした。
「……悠!? どうしたんだ、いったい」
詰所に着いた途端、僕はみんなに囲まれて質問攻めにあってしまった。群がる団員を押しのけて進む。
「ちょっと標的と出くわしちゃってさ……。シャワーと着替え、いいかな?」
興奮状態が続いているのか、不思議と痛みはない。シャワーで血を洗い流した僕は、汚れた服をカゴに投げ入れ自警団のユニフォームに袖を通した。久々のフル装備だ。そして団長室に映し出された地図を確認した僕は、ちょうど交戦状態にあった帝都南西地区に目をつけた。
「制服なんか着て……。今から出動する気か、悠」
「今日の僕は調子がいいんだ。装甲車を動かしてもらっていい?」
この有り余る力を開放してあげたい。すぐだ、すぐにもだ。
それに僕は自警団のメンバーとして、みんなから褒められ、頼られる存在になりたいと思ったから。
警棒を握る手に力がみなぎる。
つづく
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