29:U…?
地上までは少し距離があったが、ホバリングするヘリから父は飛び降りてきた。そしてゆっくり僕に近づくと、小さなカバンをこちらに投げて寄越したのだった。
「悠! その中に薬が入っている。今のお前に必要なものだ」
……違うだろう? 今の僕に必要なのはお前を殴り倒したときの開放感だ。
カバンをちからいっぱい踏みつけた僕は、父のもとに走り寄る。渾身の一発をお見舞いしてやる!
血まみれの拳を父に叩きつけたものの、様子がおかしい。さっきまでとは違い打ち抜けていないのだ。反対側の拳でもう一度打つ。父はそれでも倒れなかった。
「お前を止めるために、俺もリミッターを外してきた……。
こうするしか方法がなかったんだ。許してほしい」
許してほしい? 許してほしい?? お前は何を言っているんだ。僕は! 僕は!!
夢中で、必死に、ただひたすらに父を殴り続けた。父は一切手を出してこなかった。
殴っても殴っても眉ひとつ動かさないこの男を、どうすれば倒せるのだろうか。そう思った時……。
気配を殺して背後から忍び寄ってきたイスに針を刺され、何かを打ち込まれた。
全身から力が抜け、薄れてゆく意識、そして―—。
どれくらい経ったのか。ふと目が覚めると、僕の目の前にはイスがいた。
「やぁ、久しぶりだね……。話の続きがしたくってさ」
「悠……?」
つづく
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