27:U!
通信によると、南西地区に標的が集結しており、自警団の施設が襲撃されているとのことだった。一刻を争う事態だか、自動操縦の装甲車はスピードが出ない。キッカリ法定速度で走り続ける。
いつだったか、人間がリアルタイムで操縦する自動車は危ないなんて考えたりもしたが、改めて思うと任意にスピードが出せる昔のほうがずっと便利だったのではないだろうか。
もっと早く目的に着いてほしい。
もっと早く標的を殴らせてほしい。
もっと早くこの力を解放させてほしい。
南西地区に着いたのはわずか10分後であったが、それでも永遠とも思えるような時間を味わった。施設の近くに装甲車を待機させると、僕は暴徒鎮圧装備を手に取り群衆に向けて走り出す。
武装した連中に向け催涙ガスを撒き、鎮圧弾(ゴムスタン)を連射する。それでも物足りなさを感じた僕は、素手で標的を何体も何体も打ち抜いたりもした。
群がる奴らを徹底的に痛めつけること30分。ようやく施設の周辺は静かになった。両腕はすっかり痺れてしまったけど。
でも、まだ足りない。
(僕が本当に殴り倒したいのは、親)
やっぱりまだ物足りない。
(特に、父)
次の交戦地域を探すためいったん装甲車に戻ろうとしたその時、轟音と共に上空に1機のヘリが飛んできた。ヘリのドアからは見覚えのある男が身を乗り出している……。
「 悠 ッ !! 」
それは父だった。
向こうから来てくれるなんて!
この時、父の乗るヘリにすっかり夢中になっていた僕は、すぐ近くまで来ていたイスの存在にまったく気がついていなかった。
つづく
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