34:Topia

その後、悠はというと所属する自警団の仲間を説得し、新組織へと作り替えた。紛争で家族を、居場所を失った子供たちを引き受ける「トピア」を結成して日本全国で活動をしている。


もちろん自分の正体は隠したままだが、保護したなかに無数の同胞(カプセラー)がいることは言うまでもない。


トピアの活動が広まると、悠の想いが伝わったのだろうか。

ひとつ、またひとつと世界各地に「トピア」を名乗る組織が現れた。


そんな様子を見かねたイスもまた、数年後にエリアを去り悠の「トピア」へと合流する。


こうして世界はUとD、そしてトピアの均衡により、武力衝突の頻度も少なくなってきたのだ。統率者が不在となった両陣営の衰退もそうだが、何よりもトピアが台頭した成果だろう。



22世紀――。


『時の指導者』たちは……。

長く続いた戦いで世界人口が計画通り均されたことを確認すると、その役割を終え、誰に知られることもなくひそかに姿を消していった。もうカプセルから人を量産することはない。



制御薬の供給が止まった後、世界中のカプセラーたちはどうなったのだろうか?


クラスの誰かを好きになったり、嫌いになったり、

気になっていた人に告白したり、振られたり、

恋人と同棲をしたり、ケンカ別れをしたり、

自分を責めたり、時々人のせいにしたりと……。


思い通りにならず、たまに暴走をしてしまうが、それは「やけ食い」や「深酒」、「衝動買い」といったありふれたストレス発散へと転換された。もちろん、本当に暴れてしまう人もいるようだが。



世紀をまたいだ壮大な救済計画は、こうして静かに幕を閉じた。

三代に渡るUとDの系譜、そして悠とイスの努力と苦悩も一緒に。





おわり

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

Topia 長万部 三郎太 @Myslee_Noface

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説

双子

★15 ホラー 完結済 1話